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メイド、面接に行く

「というわけで、到着しました魔王城~。いやはや300年も経ってるとボロくなってるねー」


あれから3日後、私は今代の魔王が住んでいるはずの魔王城を見上げていた。意外に近いのよね、人間の王都から魔王城って。全力で走れば1日で来れる。今回はゆっくりと空を飛びながら来たから時間が掛かっちゃった。

魔王は100年ごとに代が変わるから、たぶん今は新しい魔王がいるはずだ。以前私と友達が倒した魔王は、筋肉ムッキムキのマッチョさんだった。動くたびに筋肉が汗で光ってて気持ち悪かったのを覚えてる。

しかもそれを見せびらかすんだからなお悪い。


魔王城は魔王の性格で見た目が変わると本に書いてあったけど、今代の魔王は結構大人しい性格っぽい。

魔王城の入口である門には可愛らしい薔薇が何千本も巻き付いてるし、きちんと門番らしき魔族が立っている。城の外観は白と黒で統一されていて、シンプルだけど本当にお城って感じがする。


どこぞの眠り姫が寝てるお城に似てる気がする。メルヘンチックなお城だ。とても魔王城とは思えない。

前世でムキムキマッチョの魔王の城を見たから更にそう思うのかもしれない。マッチョの城は気色悪かった。入口にマッスルボディの銀と銅色の像が建ってたし、城の外観は全部黒と金。しかも城の一番高い塔の上には金色に輝くマッスル像。流石にあれは引いた。


「でも大人しいっていうより・・・女々しいかも?」


とりあえずメイド姿に着替え直してキチンと服装を整えると、大きめの鞄を異次元から取り出して入口へと近づく。

すると、鎧兜を着た魔族の門番が私に気づき、武器を構えて警戒してくる。人間が近づいてきたんだから当然の反応だろう。そこであえて荷物を地面に下ろして、何かを言われる前にこちらから挨拶をする。


「ご機嫌よう門番さん」


微笑みながら魔族語で挨拶をすれば、門番はすぐに警戒しながらも不思議そうに首を傾げて私に近づいてきた。そりゃあ普通の人間は魔族語なんて覚えないからね。そんなの覚えたら「お前は魔族のスパイか!」って言って殺されるのが普通だもの。

門番はそのまま私の首元に槍を突きつけてくる。てか刺さってる。地味に痛い!それでも顔から笑顔は消さない。穏便に行くならそれが一番。


『人間なんのようだ。ここがどこか分かっているんだろう』


「えぇ承知しておりますわ。魔王城で合ってますよね?」


『殺されに来たのか』


「いえ、師匠に会いに来ました。ついでに魔王様に私を雇っていただこうかと思いまして」


そう言うと、門番は不審者とみなしたのだろう。勢いよく首に槍を突き刺そうとしてきた。

流石にそんな事されたら死んでしまうからその前に手刀で槍の穂先を切り、棒を掴んで引き寄せる。

驚く間も与えないように引き寄せた門番のお腹を狙って魔力を込めた全力の3分の1パンチ。


それだけで門番の頑丈そうな鎧がへこみ、彼は地面に倒れた。一応確認のために兜を脱がしてみると、緑色のトカゲの顔をした魔族が白目で口から泡を吹いていた。頬を叩いてとりあえずは生きている事を確認する。


「やっぱりこうなるよねー・・・ごめんね門番さん」


お詫びに鞄の中から緑色の回復薬を2つほど取り出して、一つは口の中に流し込み、もう一つは傍に置いておいた。久しぶりだから力加減が出来なかったんだごめんね!


「たぶん今ので中の人達にはバレただろうし、いっちょご挨拶やっておきますか」


他の見張りに気づかれたのか、今さっきから城から騒がしい声が聞こえてくる。

私はお気に入りの鞄の中から、その鞄の中に本当に入っていたのかと質問されるぐらい長い柄の箒を取り出す。以前10歳の誕生日に母親から貰った箒だ。

箒と言ってもただの箒ではない。世界に1本しかない魔力で育つ樹『神樹ユグドラシル』の枝を加工して作られた箒だ。

人間に極稀に現れる「巫女」と神樹を守る種族かその種族に認められた者にしかユグドラシルのある聖域に入れないのだけど、お母様がなんで持っていたのかはわからない。ただ、貰った時に言われた事が一つ。


『壊れても自己修復能力があるから思う存分折りなさい』


試しに箒で5m越えの巨石を殴ってみたら、巨石が真っ二つになるほど頑丈なのに折れるわけないでしょ。

全力でやったらどうなるかはわかんないけど相当力を込めても折れない箒ではある。

魔力で育った樹だから杖替わりにもなるという、ある意味私の相棒として申し分ない性能の箒です。

そんな箒を取り出し、片手に持って投擲ポーズになると。


「そいや!」


目の前にある巨大な門へと向けて投げた。本人は軽いつもりで投げたが、元の能力が高すぎるため、箒は剛速球で門を貫き、門へ巨大な穴を開けてブーメランの様に手元に戻ってきた。

穴の空いた門の向こうでは、何が起きたのか理解できない顔でこちらを見つめる魔族の軍団がズラリと並んでいる。

私は彼らに向けてニコリと微笑むと、普段の倍の速度で城内へ向けて走り出した。




「穏便に行かないなら強引に参ります!」






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