メイド、唖然とする
更新が開いてしまい申し訳ありません。久しぶりに書いたので文章が少しおかしい部分がありますが、いつか修正しますのでご容赦ください・
しょっぱなですが、上司命令ということで逆らうこともできず木刀を掴んだまではいいんだけど、相手の実力がわからないから手加減をどのくらいすればいいのか全くわ・か・り・ま・せ・んっ!
前世の時に何回か彼らと同じ種族と戦ったことはありますが、味方をエサにして夜這いしてきたところを叩き出して滅してたんで、実際に剣で戦ったことはないんですよねこれが。
弱点は知ってはいるんですが、この方法を試したら人生崩壊パターンになだれ込む可能性があるんですよねー。色んな意味で死ねる。
勝つ前提で話を進めてはいるけれど、油断すれば負けることなんて十分にありえますよ。知らない技とか使われたらある意味終了でしょうか。まぁそれでも勝ちますよ。
魔族と比べるとまだまだひよっ子ですけど、人生経験生半可なものじゃなかったんですからね!
「えっと…私は何をすればよろしいのでしょうか」
「何って、決闘だよー」「魔術抜きで2対1ー」
「わかりました。すみませんが準備させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「う、うんいいよー」「案外あっさり了承したわねー」
魔術抜きという事は剣の実力のみでの勝負ということだし、この条件なら気楽に出来るものです。魔術有りとか絶対このお城壊す。夢中になって本気出しちゃう。
とりあえず一旦二人には待ってもらって、メイド服のスカートを邪魔だからと短く結ぶ。これだけでも多少マシになるはずと、ある程度準備が終わった所で一つ思いついた。
本番で試してみようかなー。
「準備いいかなー」「待ってるの退屈~」
「大丈夫ですよ。すぐにでもいけます」
そう言って、わざと不敵な笑みを浮かべながら木刀を握ったその瞬間、二人の顔が変わった。
今さっきまでの雰囲気が嘘のように殺気のような物が彼らから溢れ出している。少し背筋が冷えたが、むしろその冷たさが久しぶりに心地よかった。自然と口角が上がっていくのが自分でもわかる。
「それじゃあ」「楽しもうかー」
そんなお気楽な言葉と共に、彼らはほぼ同時に木刀を私に振り落とした。
数mの距離を一気に詰めてきた彼らに少し驚きながらも、それを木刀で受け止める。続け様に打ち込まれていくが、一撃一撃がなかなか重い。
でも、やっぱり魔王軍が絶世期だった頃に比べると弱いなぁと思いながら、今度は私が相手に打ち込む。
「んっ!?」「えっ何この子」
私が打ち込んでくるとは思ってもいなかったのか、そう呟くお二人に対して私は容赦なく切り込んでいく。両手で木刀を持って私の攻撃を避けている二人と片手で木刀を持って二人に攻撃している私。一般人が見ても実力差がわかるんじゃないかなこの状況。しかも、私その場から一歩も動いてないし。
ふと周りが騒がしいのに気づいて横の通路の方を見ると、いつの間にか昼休憩が終わっていたのだろう、沢山の兵士たちが私たちを見ながら指を指しつつ騒いでいた。その中に呆然とこちらを見つめている魔女さんもいるのが見える。
うわ、気づかないうちにやばい状況になってないですかねこれ。これ負けたほうがいいのかな…と気を抜いた瞬間、カランの木刀を受け止めきれず、見事に私の顔面に木刀がクリーンヒットした。
「ふぎゅっ」
「「あっ」」
頭にくらっとする衝撃を受けて一度ふらつくけれど、なんとか根性で意識を取り戻す私。鼻にちょうど当たったせいか、鼻の奥から独特の鉄臭い匂いがしてくる。手で鼻を触ってみれば見事に鼻血が出てきていた。その血を見て慌てて攻撃を止めて私の周りをうろちょろしだす二人。動きがとても鬱陶しい。カバディですかその動き。
「あの…大丈夫ですから、すぐ収まるのでその動きやめてください」
「だだだだって!顔に当てようと思ってなかったのに!」「本気じゃなかったんだよ!」
「私の気の緩みが原因ですからお二人は悪く」
「よし!今すぐヴェンに治してもらいに行こう!」「そうしましょ!」
鼻血くらいでこんなに慌てられたらむしろこっちが戸惑うんですが。鼻を抑えつつ私の話を聞く耳を持たないお二人に対して若干呆れていると、いきなり体が空中に浮かんだ。
息をつく間もなく、両足と両腕を持たれる。頭に血が上るぅぅぅうううううう。
魔女さんへ助けを求めるように視線を向けると、魔女さんはこちらに来てくれそうになったのだけれど、二人の方が先に動いた。
「「それじゃあ超特急でまいりま~す!!」」
「おろしてぇええええええええええええええええええええええええ」
結局この後本当にレイヴン様の所に突撃した二人は私を執務室にほおり投げるとそそくさと逃げていった。
後ろから魔女さんの怒声が響いていたのが聞こえてきたから、たぶん捕まってお説教されていると思う。
レイヴン様はというと。
なぜか私を膝に乗せたまま仕事を再開してしまいました。
いや、あの淫魔たちが投げた先がちょうどレイヴン様の膝の上で、レイヴン様は仕事に集中してるのか無意識のうちに私を膝の上に乗せてそのまま書類と向き合い始めたんですよ。
私も何が何やらで最初は戸惑ってたんですけどね!数分もしたら慣れました。
で、ちょくちょくと仕事の書類を盗み見してたんですけど、ふとそこで気になる書類を発見。
「…地獄の花?」
思わず手にとってじっくりと見てしまう。地獄の花とは正式名称が黎明の花と呼ばれている物で、美しい淡いピンクの花弁に相反して球根には全ての種族にとって麻薬や毒になる成分を持ち合わせている。
正しく成分を理解し、調合すれば万能薬の材料になるのだけれど、生えている場所は魔物が多く住む場所と限られており、尚且つ少量しか取れない。その特性故、実は魔族の国から輸出されているとは人間の国の人間は一部の人間しか知らなかったりします。
今見ている書類はそれが人間の国へ密輸されているという報告書だった。しかも大量に。他の国に比べて数倍以上差がある。その取引相手もおかしかった。
「この名前、国王様の薬師の名前じゃないですか」
そう、私が仕えていた姫様のお父様、つまり国王様の専属の薬師の名前だった。なぜこんなに大量に仕入れる理由があるのだろうか。
国王様だけの病を治療するなら少量で構わないはず。この量だと数万人が治せてしまう量だ。しかもこれ5年も前から…ん?確かあの人が就任は5年前。あれ、これもしかして…。
と、そこで横から書類が抜き取られた。驚きつつ書類を抜き取った手を追いかけたら、レイヴン様が苦虫でも噛み砕いたかのような目で書類を睨みつけていた。
「レイヴン様?」
「名前」
「はい?…あぁ、そうですよ。薬師様の名前で間違いありません。実際お会いした事もありますよ」
そうお答えすれば、レイヴン様の顔から表情が消えた。
そしてすぐに立ち上がると、どこかへと早足で歩き始めた。急いでその後ろを追いかけると、どうやら玉座がある広間へと向かっていたようだ。既にそこにはいつものメンバーが控えていた。いつのまにやら。
そこでレイヴン様は衝撃的な言葉を発した。
「勇者を城に招き入れる」
驚きすぎて顎が落ちかけました。




