とあるバーでの事情説明
翌日。
面接会場を抜けてきた後、陽介は仲間と待ち合わせをしていたバーに行った。
ドアを開けて入ると、そこは薄暗い青いライトに包まれている広々とした空間があった。
「陽介さん、お帰り」
「お疲れ様です」
「……帰って来たか」
そして、彼はそこのカウンターにいる男女合わせて三人の客に反応された。
陽介は、カウンターへと向かった。
―――
「陽介さん、実はちょっと盗聴器を仕掛けてみたのですが」
パソコンをいじっている、黒いフレームのメガネをかけている女性――緒方真由美――は、パソコンに向かいながら陽介に話し掛けた。
「『一次計画』とか『二次計画』とか、あたしには分からない事だらけなので、説明していただけませんか?」
「そうそう、それ聞いてみたかったんだよねー」
「……俺も」
真由美の質問に賛同するもう一人の女性――狩野雅――と一人の黒髪の男性――秋本誠護――。
「話せば長くなるのだが」
陽介は躊躇する。
「えー、じゃあ話さなくていい」
雅はそのポニーテールのピンクの髪をいじり始める。
「雅さん、長い話が嫌いだからって、それは無いですよ。……第一、今回は重要な話なので、聞いてもらわないと困ります」
真由美はパソコンに向かいながら話す。
「……お前はその癖を治したらどうだ?」
誠護に言われ、黙るしか無くなった真由美。
「茶番は終わったか?」
陽介が言うと、目をつぶって話始めた。
―――――
(陽介の目線)
十年前。
その頃、児童養護施設に入っていた俺は、ある男に拾われた。
その男の名は、九条晶。
前回の件――いや、今回のもか――についての研究者だ。
九条は、俺がいた児童養護施設にいた俺を含めて全員を受け取ると言った。
そして、引き取られた俺たちはあの計画の実験台とされた。
その時の理想の超能力の在り方というのは、ある一定の能力を存分に発揮させること。
だが、実験は全員失敗。
俺みたいにほんの少しの力だが、多数の力を出すことが出来る奴も失敗作とされた。
そして、俺たちはまた捨てられた。
それから、俺たちは個人で生きることにして、別れたんだ。
―――
それから七年の月日が流れた。
俺たちは同窓会を開いて再会して、そこから皆で飲みに行ったんだ。
俺の隣にたまたまあの研究所で働いている奴がいたんだ。
そこで、『二次計画』について知ったんだ。
―――――
「……へぇ〜。
陽介さんも被害者だったんですか〜」
と真由美は言い、続けて、
「……で? 結局、『二次計画』って何なんですか?」
「あぁ、『二次計画』は……」
そう言い掛けると、いきなりドアがバン!!!! と壊れ、軍隊の服を着た男たちが二十人くらい入ってきた。
「それ以上、話されては困るんだけどねぇ、……神谷陽介君?」
そのうちの一人の白衣を着た男が言った。
「…………」
「まぁ、いいや。……じゃあ、殺っといて」
と彼は言うと、去って行ってしまった。
二十人くらいの男たちは陽介達の周りを囲んだ。
そして、銃を構えている。
「まぁ、そんな焦んなよ。ここは穏便にやって行こうじゃないか。まずはここを離れるとか」
陽介がそう言うと、
「……そうだな。ここを離れた方がいいと思うぞ」
誠護が続く。
「匿名の警察組織を呼んだ。その組織はお前らのようなヤツを追っている組織で、場合によっては、かなり酷い手を使うことがある。それに、意外とおしゃべりだから、メディアにリークされるぞ? お前らのおエライ様方はまだそれを望んでいないはずだ。そういう目に会いたくないならさっさと去れ。俺たちも争い合いたくない」
陽介が脅す。
「覚えてろよ!」
と二十人くらいの男たちのうちのリーダー格らしい一人の男がいい、彼らは去って行った。
「よくあるセリフだな」
誠護は無表情で吐き捨て、続けて、
「俺たちも行くか。
……マスター、ごちそうさま。騒がせてしまって、ごめんなさい」
ぺこりと頭を下げると、四人は去って行った。
―――
とある街で。
「で? 結局、『二次計画』って何なの?」
雅が聞くと、
「『一次計画』の超能力の在り方が逆になったんだ」
「……? それってつまり……どういうこと?」
「つまり、『二次計画』は、大きな力で多数の力が出せることが在り方になったんだ」
「で、本当は在り方なんてどうでも良くて、人体実験をしてそれを得たっていうのがダメだから、俺たちはそれを止めに行くんだよね」
誠護が最後に付け足した。