いつも通りのはずが……
ある日の夜。
鈴花たちは、いつもの口止めの作業をし始める。
―――
今回は警察は来なかったので、あっさりと勇者のアジトに侵入できた。
そして、ドアの前に着き、
「政府の暗部でーす。命令により、あなたたちを殺りに来ましたー」
と、毎回の如く鈴花が大声かつ棒読みで言った。
そして彼らは口止めを開始した。
―――
鈴花は刀を華麗に振っていった。
その刀の先で一人、また一人と倒れていく。
護衛の人たちは唖然としていた。
―――
最後の一人。
「あなたがリーダーですか?」
鈴花は残っていた茶髪で赤いコートを着た一人の男性に声をかけた。
「あぁ、そうだ。……俺がリーダーだ」
低いかつ憎しみがこもった声で言い、続ける。
「あんたらはこんなことをして気持ち良いのか?
あんたらはあんなことをする奴らの下で働いて、楽しいか?
俺は奴らが憎い……無論、あんたらもだ」
しばらく沈黙が続いた。
「あたしは……」
鈴花は言い、刀を構えながらリーダーに向かって走りだす。
「……好きで、こんなことをやってる訳じゃない!!」
そう言った直後、二人の刀が相対し、長い長い戦いが始まった。
―――
その戦いが始まった直後、一人の男が3分に設定した時限爆弾を仕掛けた。
もちろん、相手のリーダーは知らない。
―――
2分30秒後。
二人の戦いはまだ続く。
そして、相手のリーダーの刀が鈴花の足を斬った。
(クッッ!! 足が……!!)
鈴花の左足が斬られて、使えなくなってしまった。
その時、鈴花は時限爆弾のことを思い出した。
(あと…………10秒!!??)
彼女は慌てて天井に刀を刺して小さい穴を開ける。
「どうした!? ……逃げるつもりか!?」
……9……
二人は戦闘を再会する。
……8……
まだ続く。
……7……
(まずい。もうこれ以上は……)
……6……
鈴花はもう一度、天井に穴を開け、元々あった穴を大きくする。
……5……
鈴花は相手のリーダーを振り払った。
……4……
鈴花は倒れている相手を引き摺った。
……3……
鈴花は引き摺られた相手を下敷きにし、穴の先へと登り始める。
……2……
斬られた左足がどうも上手く動かず、痛みが走り、力が出せずにいた。
……1……
ようやく登りきり、近くにあった岩を下に落とす。
…………0
……爆発した。
案の定、鈴花は無事だった。
そして、下を見下し、静かに哀しげな顔でこう言った。
「許せ、勇者ども。
あたしは妹を守るため、こうするしかないのだ」
そして、死んでいるかどうかを確認した。
―――
その後、すぐに迎えの車が到着し、そしてそれに向かうときに……。
「へぇ〜。『妹を守るため』……か」
その声に鈴花は驚いた。
開いた穴の近くにあの男が立っていた。
確かにあの男は死んだはずである。
「だったら、俺は『救って』やる!!
あんたの妹も、それで縛られているあんたも……!!」
彼女は泣きそうになり、目に涙が溜まる。
「……何を!!」
その思いとは裏腹に別の――むしろ逆の言葉が出ていた。
そして、鞘に収めていた刀を抜き、走り出そうとした、
その時。
後ろにいた車に乗っている仲間の男が彼女の手を取り、
「止めなさい。その怪我ではあなたに勝機はありません」
そして、ドアを閉め、続けて、
「あと、今後一切、あの男の言葉に耳を傾けないでください。さもないと、妹は……。
もう、お分かりですね」
仲間の男は怖い笑顔で彼女を見つめた。
鈴花は手を震わせ、うつむいていた。
車が走っている中、日は昇り始めた。
感想•評価、よろしくお願いします。