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許せ、勇者ども!!  作者:
番外編 出会い
18/20

その実の名は

 周りから異臭が漂う汚れたこの廃屋の中で、黒髪の少年は1人、赤い、彼の手よりも大きな実を齧り付いていた。


 その実の名を、彼は知らない。


 この実は、まだその少年が物心つく前からの大好物で1週間に1回は食べていた。彼が住んでいた国は元々経済的に豊かで、彼の両親は異国から仕事でやってきたのだ。しかし、彼が物心がつき始めた時、彼の国で恐慌が起こった。そして、彼の両親はその実の名を教えることもなく、彼を置いて、祖国へ帰ってしまった。


 彼はどこにも拾ってもらえることもなく、こうして今も廃屋で暮らしているのである。


「あ〜、かったる〜い」


 彼は大の字でそこへ寝転ぶと、そのまま寝てしまった。


 ーーー


「お……おま……、こっ……に……いよ!」


 どこからか、声が聞こえる。しかし、エコーが強過ぎてよく聞き取れない。


 男の人の声なのは、わかる。けど、何を言ってるかさっぱりだ。


 少年は目を開いてみる。


 ーー外だーー


 ……でも、ぼやけてよくわからない。ここはどこだ? ……俺はいったい……


 すると、目の前が真っ白になり、耳鳴りがなり始め、彼の気が段々遠くなっていった。


 ーーー


「……っ!!」


 彼は汗だくになりながら起き上がった。辺りは真っ暗で何も見えない。どうやら夜のようだ。


「……こんな時間まで寝てたのか、俺」


 少年は頭をかき、起き上がって、壁に縋りながら前へと歩き出した。


「お腹空いた。あの実どこだっけ?」


 以前にたまたま自動販売機の下で見つけたライターでろうそくを灯し、辺りを少しだけ明るくさせた。


「あった、あった。……あれ、あと1個しか残ってないじゃん」


 彼は大きくため息をつく。


「しゃーない、取りに行くか」


 彼はろうそくを持って階段を降りると、ろうそくを消し、ボウガンを持って家を出たのであった。


 ーーー


 歩いてから何時間経つのだろう。日が登っていくのが見えた。


 その頃、少年は港に来ていて、その様子を眺めていた。そんな時だった。


「やぁ、少年。どうしたんだ? こんなところでそんなもの持って」


 彼の知らない親切そうな男性が、大量の魚を乗せてボードから声をかけてきた。


「子供がそんなものを持ってはいけないよ、だから、それをその辺に置いて……うわ!」


 少年は彼に銃を向けた。


「それを俺に全部くれ。そうすれば見逃してやる」


「何!? そんなことは……」


 バンッ!


 彼の足元に1発、打たれていた。


「……嘘だろ……こんな子供が……」


「くれるの? くれないの? ……どっちなの?」


「あっあっ……あげます! ……全部!」


 男性は慌てて降りて両手をあげながら、慌てて逃げて行った。


(……さて、これからどうするか)


 どこからか、パトカーの音がする。……段々こっちに近づいて来てる。


(……やばい。とりあえず、このボートに乗って……)


 魚が大量に乗ったボードに彼が乗り、そして海に向かって漕ぎ始めた。


 ーーー


 あれから何日経つのだろう。


 とりあえず漕いではみたものの、全く島が見えない。そして漕ぎ始めに大量にあったあの魚たちもあと1匹になってしまった。ついでに釣竿はおれてしまっている。


(このままじゃマジで餓死しそう……)


 少年は空を仰ぎ、不意に前をみた。


(……光?)


 気になったので、光の方向へ漕いでみると、それが段々と緑へと色が変わっていった。


「島だぁーーーー!!!!!」


 少年は嬉しさの余り叫び、そして気が緩み、後ろに倒れて気絶してしまった。


 ーーー


「おい、おい! 大丈夫か、おい!」


「う……うぅん……」


 黒髪の少年は茶髪の少年に叩き起こされた。


「……ここは、どこ……?」


「バカ、ビーチだよビーチ! お前、海から流されて来たんだぞ!?」


「……海から……? ……そっか、俺、ボードの上で意識がなくなって……」


「とりあえず、両親は? 連絡先とかわかるか……?」


「……親? 知らないや……親との記憶そんなないし……」


「……んあぁ、もうめんどくさい! とりあえず、俺んち来い!」


「……え?」


 茶髪の少年は、黒髪の少年を引っ張って行った。


 ーーー


「おかえり、陽介! 遅かったわねぇ! ……ところで、そっちの男の子誰?」


「さっき、ビーチで知り合ったんだ。……えーと、そういや、名前聞いてなかったな」


「……秋本誠護あきもとせいご


「誠護くんって言うのね! あたしはリリー。これでも一応、公務員です!」


 彼女は敬礼するとニコッと笑顔で誠護をみた。


「よろしくね! 誠護くん! ようこそ、迷子の家ロスト・チルドレン・ハウスへ! 私達はあなたを歓迎します!」


 周りの子供たちがクラッカーを鳴らし、そして拍手で彼を出迎えた。


 誠護は困惑しながら廊下を歩いていった。


 ーーー


 後日。


「……そういえば、これ、何ていうの?」


 彼は大好物の赤い実をとって台所で洗い物をしているリリーに聞いた。


「『りんご』って言うのよ」


「……りんご……」


 彼はそうつぶやきながら、まじまじとりんごを見ながら少しずつ食べていた。


なんか、あれっすね、今映画でやってるやつみたいっすね

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