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許せ、勇者ども!!  作者:
番外編 出会い
17/20

脱走劇

 時は十年前。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


 闇夜の住宅街を少年たちが駆け抜ける。


「コラ、待て!! ガキどもが!!!」


 そんな彼らを追いかけているのは、この暗い空と同じくらいの濃さの黒服の男たちである。


 そして、少年たちは、曲がり角を右に、左に、また右に……と走って行く。


 しかし、少年たちの体力も限界に近かったのか、段々と速度が遅くなり、黒服たちの距離も狭くなってきた。


(もう駄目だ……)


 走りながらもそう考える者も出てきただろう。


 しかし、その直後に右に曲がった彼らに奇跡が起こった。


 ーーー


 少年たちが右に曲がった時、茶髪のセミロングくらいのビニール袋を持った女性とぶつかったのだ。


『痛っ!』


 一人の少年がぶつかり、その反動で彼は尻餅をつき、立ち上がれなくなった。


「……おい、大丈夫か!?」


「立てるか?」


 その少年の周りに仲間たちが集まっていた。


「……俺のことはいい。それより早く行け!」


「……僕たち、大丈夫?」


 その場の空気を静まり返らせてしまった女性は、その綺麗な手を差し伸べて、それによって少年が身体を起こした時に、黒服たちがとうとう少年たちに追いついてしまった。


「……お……追いついたぞ……ハァ……ハァ……さぁ、……ハァ……帰ろう……」


 黒服の男は、息を切らせながらも、身体を中腰にし、少年たちに厳つい手を差し伸べる。


 しかし、少年たちは女性の背に身を隠したまま出ようとしない。


「……ほら、早く来なさい!」


 黒服の男たちが後ろへ回り込み、少年たちを捕まえた。


 その少年たちが「嫌だ、嫌だ!!」と叫んで、暴れ出した。


「……嫌がってるじゃない」


 女性はふてくそうな顔でその光景を見ていた。


「……あなたには関係ありませんよ」


「……ただの一個人としての意見を言ったまでよ。何ならその子ら全員預かりましょうか?」


「……!」


「実は、私、こういう者でして、この国が密かに妙なことを企んでいるという噂を聞いて、上からの命令でここへやって来たの。……その様子だと、どうやら本当だったようね」


 彼女は名刺を黒服たちに見せびらかした。そこには、『FBI捜査官 リリー•ルフェビュール』と書かれていた。


「……外国が手を出すことではないだろう」


「……あら、公にしてもいいの?

 だって、まだ機密事項なんでしょ? ……しかも相当な」


「…………」


「……ここ最近の殺人事件。あれの被害者は、みんな政府関係者でしょ? マスコミが随分と不妊だ何だって騒いでるけど、本当はそうじゃない。本当は、このことを世にさらけ出そうとしたから。……まだ、そこに至った経緯は知らないけど」


「…………」


「とにかく、この子達は預からせて頂くわ」


 彼女は、子供達の手を取り合うと、後ろに振り向き歩いて行ってしまった。


 黒服の男は、震えた手で持っていた銃をあの女性に向けた。


「ハハ……、馬鹿め……こんなことをするからお前もその政治家たちの二の舞になるんだ……」


 その言葉と共に、男は銃を発砲した。……が、彼女は倒れていない。それどころか、こちらを睨みながら近づいて来る。


「なっ……、何故だ……。だって、ちゃんと……」


「答えはあなたが一番分かっているはずよ」


 彼女は腰が引けてしまった男を見下し、そして睨む。その後ろであの転んだ少年が手を前に出していた。


「まさか……」


「そのまさかよ。その子が超能力で弾を抑えてくれたの」


 彼女は、持っていたビニール袋からロープを取り出し、近くにあった電柱と黒服たちの手首を縛り付け、その後に警察に通報したのであった。


 ーーー


 翌日。


 彼女の六畳の部屋には、十人以上の子供達が朝ごはんを食べていた。


 その中で、一人、食べずに下を向いていた子がいた。


「どうしたの? ……食べないなら私が食べちゃうよ」


「……本当に、いいの?」


「……ん?」


「本当に、こんな変な能力を持たされた俺たちと一緒で、いいの?」


 その言葉で、子供達の手が止まり、一瞬にして場の空気が凍った。


「……別に、気にしてないし。ていうか、その君のチカラが無かったら、私、死んでたんだよ?」


「……へ?」


「だから、感謝してる。だから、恩返しさせて!」


 そう、彼女がニコッと笑うと一人、また一人と、朝ごはんを食べ始めるのであった。

番外編、その1です!

……誰の物語か分かりました?

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