最終決戦の前日
デモの執行から三週間後。
陽介たちは、相変わらずアジトでのんびりと生活している。
「暇〜〜〜〜!!!!」
ソファーの上でファッション雑誌を顔に被せながら、足をじたばたする真由美。
「そんなに言うなら、雅の手伝いをしたらどうだ? 少しは時間を潰せるんじゃないか?」
刀を砥石で磨ぐ陽介。
「だって、雅が『手を出すな』って言うんだもん」
「お前、子供か!! ……それより、陽介。いい加減、動いたらどうだ?」
射的を見事にど真ん中を撃ち抜く誠護。
「……今、何をどうする事もできない。向こうの反応を待つだけだ」
「……でも、潰すなら今しかないだろ」
「今、潰したところで、得たものは何もない」
「…………?」
「……むしろ、失わせるだけだ。人体実験をされた者の未来も。――あの女の未来も」
「そんな感情論で、動かなかったら、いつまで経ってもこの問題は一生解決しないだろう!?」
「……最後まで聞け」
「…………?」
「俺たちは向こうがバラしたくないことをバラしたんだ。当然、このまま放っておく訳にも行かない。だから、近いうちに向こうが、攻めて来るに違いない」
「えっ、マジで!? セキュリティ強化しとかなきゃ!!」
焦ってパソコンを操作し始める真由美。
「でも、それじゃあ……」
「……あぁ、わかってる。その後の事は、俺に任せとけ」
胸を叩き、笑顔を見せる陽介。
(不安だ……)
一人で頭を抱えつつ、射的の的から大きく外す誠護であった。
―――
同じ頃、九条たちは、陽介たちのグループを潰す最終調整をしていた。
「いいか!? この戦いは、反逆者を滅ぼす第一歩となるはずだ……。心してかかれ!!!!」
『ハッ!!!!』
九条晶は、作戦を説明した後、そう言って会議室を後にした。
―――
一方、陽介たちも最終調整に入っていた。
そんな中、暇そうな陽介はソファの上に寝転びながら、テレビのニュースを見ていた。
[いやー、とうとう、明日ですね]
[そうですね! この前のデモで、どうなる事かとヒヤヒヤしてましたが……]
(まさか……)
それまで気楽な気持ちでいた陽介は、身体を起こし、顔を顰めた。
[皆さん、もうお分かりでしょう! 公開実験が、明日未明、××県◯◯市の廃墟で開始されます!]
『ハァ!!!???』
そこにいる全員の手が止まり、沈黙が続く。
「明日って、あの明日ですか……?」
「……みたいだな」
「しかも、このテレビに映ってる廃墟って、ここじゃあ……」
「おい、真由美!! ボサッとしてないでさっさと作業しろ!!」
「わかってます!」
「……今日は徹夜だな」
「それだけは勘弁して〜」
真由美は焦りながらも作業を再開する。
「……ファァ」
陽介は欠伸をする。
「俺、明日に備えて寝る」
そう言って、自室に向かう。
「おい、陽介。お前は準備は出来てるのか?」
誠護は陽介に聞くと、陽介は今までに見たことがない真剣な顔で答えた。
「……当然だ。俺は、その日のためにここまで準備してきたんだ。武器から費用まで、全てな」
「陽介……」
「『明日のことを思い悩むな』」
「…………!!」
「『その日の苦労はその日だけで十分である』。……この言葉、お前が俺に教えたんだろ? ……誠護」
「…………あぁ、そうだったな」
「……みんな、そういう事だ。明日、0時にここで作戦を発表する。じゃあ、おやすみ〜」
そう言って、笑顔で手を振りながら自室に向かう陽介だった。




