第九話 宴の前に
二人で歩き、商店街にたどりついた。商店街には圧倒的に学生が多く、クライドは今が夏休みなのだということを強く実感した。
「あれは、ブリジットじゃないのかい?」
ノエルに言われ、顔を上げる。すると、見知った美しい黒髪の女性が商店街の一角から出てくるのが見えた。その店は確か八百屋か花屋で、ブリジットが手から下げたバッグの中身に花がないことからするとそこは多分八百屋だ。
八百屋から出てきたブリジットはこちらに気づかずに、すたすたと歩いていってしまう。
「本当だ」
呟いてみたものの、様子がおかしいとクライドは思った。冬に見たときには平らだった彼女の腹部が、何故だか今は妙な具合に出ているのだ。ブリジットは胸の大きい女性だから、正面から見ればその腹が極端に目立っているわけではない。しかし、横から見たときにクライドは妙な違和感を感じたのだった。そんなに急激に太るはずがないと思う。それに、腕や脚は細いままだ。
「六、七ヶ月、ってところかな」
ノエルが穏やかに笑みながら言う。クライドは状況を飲み込めずに、ブリジットとノエルを見比べて首を捻る。
「何が?」
「だから、ブリジットだよ。あと数か月でついにグレンが叔父さんになるね」
キャリーカートを引きながら、ノエルは嬉しそうに笑う。クライドは他の店に入っていくブリジットを遠目ながらも見送りつつ、叔父さんということばの意味について考える。
「子供、いるのか」
恐る恐るそう切り出すと、ノエルは新緑の目を細めて嬉しそうに頷いた。意外と子供好きなノエルだから、生まれたらきっとたくさん遊んでやるだろう。
まさか、ブリジットが母になるなんて。もともと母性を感じさせる人ではあったが、こうも早く母親になってしまうとは思っていなかった。イノセントには戸籍がないため結婚ができないという話だったが、その問題にも対処法が見つかったのだろうか。
「お店には、イノセントがいるのかな」
「そうだろうな。また勝手に出て行っていないといいけど」
ノエルの言葉に反応して、クライドはすぐそこに迫ったブリジットの店を見る。しかし、ここから中の様子をうかがい知ることはできない。クライドは、近づいていって魔法の店の扉をあける。
内装は冬に来たときから何ら変わっていなかったが、何となく空気が違うような気がする。ブリジットが、アロマオイルを変えたのだろうか。
店内には古びた椅子やテーブルがあり、奥のカウンターにはノエルの予想通りイノセントが居た。イノセントはこちらを見て、一瞬驚いたような顔をしてから口角を上げる。
「よくきたな」
以前の彼からは、絶対に聞けなかった言葉である。クライドは少し驚くのと同時に、嬉しくなった。これから父親になっていくのだから、角が取れている方がいいに決まっている。
ノエルは早速店内の椅子に腰掛けて、優雅に足を組んでいた。クライドもノエルの隣に座った。
「久しぶりだな、イノセント」
「ああ。待っていろ、茶を用意する」
「ありがとう」
六月に二十三歳になったばかりのイノセントは、初めて出会ったときよりも随分と雰囲気が若返った。それでも、実年齢より五歳は確実に上に見えるのだが。ブリジットは子供がいるには若いと思ったが、イノセントを見ていると子供がいてもおかしくなさそうな歳に見える。
イノセントは店の奥にある小さな冷蔵庫から、プラスチック製のポットを取り出していた。そして、グラスを探し出してそれに氷を入れている。
「ブリジットに会ったよ、イノセント」
店の奥に向かって、ノエルが言った。暫く返事が返ってこなかったが、やがてイノセントがぼそりと「ああ」と呟くのが聞き取れた。
「買い物なら、イノセントがすればいいと思うんだけど」
ノエルは不思議そうにそう言う。多分ノエルは将来子供ができた場合、率先して家事をやるのだろう。家庭的なお父さんになることは間違いない。そして、ノエルの場合子供を溺愛すると思う。
イノセントはカウンターを離れ、二人分の冷たい緑茶をクライドとノエルが居るテーブルに置いてくれる。軽く礼を言うと、イノセントは肩をすくめた。
「目を離していた隙に」
「ちょっと、なによそれ。まるで私が逃げ出したみたいな言い方じゃない」
声のするほうを振り返れば、不機嫌そうなブリジットが戸口に立っていた。ゆるやかにウェーブのかかった長い黒髪は相変わらずだが、前髪がワンレンになってより大人っぽさが増した。つける口紅を変えているのも相まって、ブリジットの印象は前よりも更に色気を感じるものになった。身体の線にぴったり合ったドレススタイルは封印し、おなか周りがゆったりしたマタニティワンピースを着ている。
「いらっしゃい、クライドにノエル。久しぶりね」
ブリジットは大きな荷物を持ってカウンターに歩み寄り、荷物をイノセントに渡した。イノセントは無言でそれを受け取り、中に入っていた生鮮食品を冷蔵庫にいれている。いつもの二人に見えるが、ブリジットにはイノセントの微妙な感情の変化もすぐ読み取ることができるようだ。
「イノセント、何怒ってるのよ」
「勝手に出て行くからだ。その身体で無理をするな、お前にも子供にも負担がかかる」
クライドは、二人のやり取りを見ていて何だかほほえましい気持ちになった。イノセントがぶっきらぼうに、それでもブリジットを気遣っているということがありありと感じられる会話だ。この男なら、きっと立派な父親になるだろうとクライドは思う。
「……ごめんなさい」
「休んでいろ。今、水を持ってくる」
しょげたように謝るブリジットに、優しく声をかけるイノセント。ブリジットは柔らかな笑みを浮かべ、クライドに歩み寄ってくる。
「驚いたでしょ」
「ああ、物凄くな」
悪戯っぽく笑うブリジットに、クライドは笑みを返した。もうじき母になるこの人は、クライドの従姉であり姉であり、友達のような女性だ。
「触ってみる?」
ブリジットは言いながら、クライドの手首を掴んで自分の腹に沿わせた。暖かな体温と、彼女の服のざらつきを感じる。と、ブリジットの腹の中で何かが動いた。
「うわ、動いたっ」
思わず声に出してしまう。クライドは一人っ子だし、周りに妊婦さんもいなかったのでこんな経験をしたのは初めてだ。そんなクライドを見て、ノエルがくすりと笑みを漏らす。
ブリジットの腹の子は、クライドの手のひらが当たっているところを続けて何度か蹴ったようだ。彼女の身体の中に居るまだ顔も知らない子供が、クライドに一所懸命自分の存在を伝えようとしている。
「この子、女の子なんですって」
ブリジットは微笑みながら言った。ブリジットとイノセントの子供なら、きっと美しくて頭脳明晰な女性に成長するだろうとクライドは思う。
そうか、この子は自分の『従姉違い』になるわけだ。クライドは、自分の親戚が増えるという感覚をまだ上手く実感できていない。ブリジットの腹から手を離して、クライドは彼女をしげしげと眺めた。
「名前、もう決まってるのか?」
「いいえ。イノセントとふたりで相談して決めるのよ」
ブリジットは笑う。本当に幸せそうな笑みだ。イノセントはグラスを持ってきて、ブリジットに差し出している。彼女はそれを受け取って、何口か飲んですぐにグラスを置いた。
「ねえ、私の赤ちゃん。今の人が、クライドよ」
自分の腹を撫でながら、ブリジットは言う。そんなブリジットを、イノセントが優しく穏やかな眼差しで見つめている。本当に、イノセントは随分と変わった。
「ノエルも触ってみる?」
ノエルは頷いて、ブリジットの腹を撫でる。クライドの従姉違いはノエルの手のひらを蹴ったようで、ノエルは一瞬驚いたようにぴくりと動いた。
「セシィが母さんのお腹にいたのは、僕がまだ四歳のころだったからね」
ノエルはそういって、にっこりと笑う。ブリジットは興味を持ったのか、ノエルの話をじっと聞いている。ノエルは、自分が生まれた時のことや妹が生まれた時のことをブリジットに話していた。ノエルはすんなり生まれたが、セシリアのほうが難産で大変だったらしい。ノエルの父が分娩室の前で一睡もせずに無駄に歩き回っている姿は、ありありと想像できた。
少し開いた窓から、涼しい風が一筋流れ込んできた。冷房がなくても涼しいこの店が、リヴェリナで一番の避暑地だとクライドは思う。
「そういえば、クライド。本題はいいのかい」
ブリジットに身の上話をしていたノエルが、唐突にそういった。そうだ、すっかり忘れていた。クライドはここにきた目的を思い出し、イノセントを見上げて問いかける。
「人工魔力を作ってる場所、あれから何か解ったか?」
訊ねてみると、イノセントはううんと唸る。彼は何と答えてくれるのだろう。クライドの知りたいことを、彼は知っているだろうか。そして今、ハビは一体どうしているのだろう。また裏の人格で暴れて、誰かを傷つけてしまっていなければ良いのだが。
「一応、解ったことはある。例の結社があるのはエナークだ。アルカンザル・シエロ島に数時間で行ける範囲だというところまでは突き止めた」
「街の名前は?」
「大都市だということまでしかわからない。首都かもしれないがやや郊外に出た方があの島までの空路が確実にある。地理に関してはノエルのほうが詳しいだろう」
エナークは、先進国のひとつである大国だ。ラジェルナの丁度反対側にある国で、空路も海路も整っているから行こうと思えば行ける。エフリッシュ系の民族が多いが、移民もかなりの割合でいると社会科で習った。世界で一番移民の比率が高い国、と言われていた気がする。渡航に二十時間あまりかかるといわれても、時間もわからないほど長い間森をさ迷ったクライドからしたら近い部類に入る。
エナークはラジェルナよりも大きく、世界でもトップレベルの経済力を誇る国だ。知っている国を挙げろといわれたら、きっとどの国の人間も母国の次にエナークを挙げるだろう。存在感がある国というと何だか変な感じだが、エナークは確実に発展途上国の羨望を集めるような国だ。
「エルシータかフェドレーズ、ベイレ辺りか…… 人探しするには難易度が高いね、人口密度が高い」
こういうとき、即座に脳裏に地図を思い浮かべるノエルはすごい。イノセントは頷いて、両手の長い指をテーブルの上で組んだ。
「信頼できない筋から首都だとも郊外だとも聞いた。何せ影の男として暗躍している時のマーティンは、目撃証言をほぼ残さないからな。どの情報も決定打に欠ける」
ノエルの言葉に、イノセントは曖昧な答えを返す。イノセントは、直接マーティンがいる場所へ向かったことはないようだ。
それどころか、何故マーティンがイノセントにだけ執拗に攻撃をしかけてくるのか、最初は彼にも解っていなかったらしい。
「俺が殺したのは、あいつの弟だったようだ」
イノセントは言った。そして、静かに目を伏せる。後悔を滲ませた青い目は、結婚指輪のはまった左手に向けられている。口数の少ないイノセントが、何を思っているかは想像で推し量るしかない。下手に何かを言うことも出来ず、クライドもノエルも黙った。
「だけど、だからといって貴方が殺されるのが正当だとは思わないわ。償いは、貴方が生きていなきゃできないのよ」
宥めるようなブリジットに、いつもの無表情でイノセントはこう返した。
「今更何をしても、生きている限り罪は消えない」
彼がぼそりと呟いたその一言が、クライドの心の中に軽く痛みをもたらした。イノセントがどんなに立派な人間に更生したとしても、イノセントがマーティンの弟を殺した事実は無くならない。十歳のときに犯した罪を、イノセントは一生背負って生きていくのだ。そして、それを一番近くでブリジットが支え続ける。
「それでも、イノセントは立派な父親なんだ。どんな罪を背負っていようと、子供にとっては父さんは一人しかいない。だから責任もって、子供のそばにいてやれよ」
そう声をかけると、イノセントは顔を上げてクライドを見た。
「それにさ、犯した罪ごと戸籍が抹消されてるじゃん。もう法律的には償いようもない気がするけど」
そう言うと、イノセントは少しだけ口角を上げた。
しばらく四人で会話を続けたが、クライドは窓の外を見て席を立った。もうすでに、日が暮れかけている。
ブリジットに軽い食事を用意してもらったため、空腹を感じることがなかったのだ。だから、時間の感覚が少し麻痺していたのだろう。
「そろそろ行くな。待ち合わせがあるんだ」
そういうと、ブリジットは柔らかに笑んでクライドに手を振ってくれた。イノセントは玄関先まで送ってくれる。
二人で、待ち合わせ場所に行くと、そこにはサラとシェリーが既に来ていた。アンソニーとグレンはまだ遊んでいるようだ。
「おかえりー、楽しかった?」
シェリーが上機嫌で笑う。クライドも微笑み返し、ノエルをすっと振り返った。彼はいつもどおり穏やかな顔をして、サラを見つめていた。サラはノエルを極力見ないようにしていたが、ふとした拍子に彼を見てすぐに目を逸らした。サラはサラで、久しぶりにノエルに会えた緊張からか空回りしている。
シェリーもその瞬間を目撃したようで、クライドと目を合わせて何か訴えかけてきた。即座に、クライドは話題を考える。
「そういえばさ、二人とも。知ってるか? ブリジット」
「ダメだよクライド。その話は、サプライズにとっておこう」
声に出すと、ノエルがやんわりとそうたしなめてきた。確かに、本人を直接目にした方が驚くだろう。
「ブリジットが…… どうしたって?」
「私、知ってるよ? シェリーごめんね、教え忘れてた」
どうやら、この中でブリジットが妊娠したことを知らないのはシェリーだけらしい。考えてみればサラはそれなりにブリジットと親密だし、商店街をよく通る人間だ。気づかないほうがおかしいと思う。
「グレンとトニーもまだ知らないよな」
クライドはそうノエルに振ってみる。ノエルはシェリーを見て、それからクライドをみて頷いた。サラは相変わらず、ノエルを見ないようにしながら話に合わせて笑っている。
「シェリー、君だけじゃないから安心して」
「何それ、教えてよ。気になる!」
ノエルの言葉に不満を返しつつ、シェリーは上目遣いにクライドを睨む。しかしクライドはその視線を軽くかわし、サラに向かって微笑みかけた。
「なあサラ、さっきシェリーと話してたろ。好きなタイプ。俺もあの話に混ざりたい」
恋愛方面の話題を振ればサラがノエルを意識しやすいかと思ったのだが、サラは驚いたように目を丸くして固まった。ノエルもすっとクライドから離れ、ひとりで海の方へ向かって歩いていく。彼が何を感じてクライドから離れたのかは解らないが、ノエルを追いかけていったシェリーの視線は何だか非難めいていた。
もしかすると、今この状況を悪化させたのは自分なのだろうか?
「そうだね、クライド、去年のラジオ聞いたんじゃない?」
ぽつりとサラはそういって、シェリーの方をちらりと見る。シェリーはノエルに追いつき、彼の背中をばしんと音がするぐらいに叩いていた。叩かれたノエルは、結構痛そうだった。
「あれか。友達で言うと誰だろうな、たとえばウィフト語が喋れて医師の資格を持っているような奴とか?」
そう言ってみると、サラに軽く睨まれた。彼女は重いため息をつき、再びちらりとノエル達を見た。二人は、落ちそうなほど海に近い位置で何かを話していた。時々ノエルが悲しげに俯いたり、シェリーが怒ったように両手を腰に当てたりしている。
「知ってて言ってるでしょ」
「まあな。だからわざとノエルの前できいた」
物悲しげなサラに対し、クライドはそう答えた。どう見ても両想いで、あと少しの勇気さえあれば二人は恋人として、そしてそのままいずれ夫婦として一生添い遂げるのだとクライドは確信している。くっつくところは想像できても、破局するところは思い浮かばない。
「冬のことが頭から離れなくて。距離がすごく近くて…… でも、あのとき近づきすぎちゃったのかな。だからノエル、ちょっと距離をとろうとしてるのかなあ」
サラは俯き加減にそういい、小さくため息をついた。クライドはそんなサラを見下ろして苦笑する。全く、不器用な二人だ。
「無理にとは言わないけどさ、時々ノエルに話しかけてみろよ」
「どうやって話しかけたらいいの?」
その言葉に、クライドは頭を抱えたくなった。この短時間で見事にお互いに考えすぎて、拗れに拗れている。
「話題なんか何でもいい、ノエルだって話したいんだ。俺やシェリーがサラと話せるようになってあいつ寂しくなってるんだよ。サラの一番の親友はもう自分じゃないかもって言ってた」
「本当? ノエル、私のこと、そんなふうに言ってくれたんだ…… 私、ノエルと前みたいにいっぱいお話したいよ」
サラから声をかければノエルは全くいつも通りに対応するだろう。なにせあの頑なだったノエルが、やっと告白のタイミングを計ると明言したのだから。しかし、このままだとお互いがお互いに遠慮して視界に入れないようにしあっているのだから進展しない。
「それ、直接そう言えばいいんだよ。話したいって、前みたいに楽しく過ごしたいって」
振り返れば、ノエルとシェリーがこちらに戻ってくるところだった。
シェリーが何か言いたそうにしているが、ノエルは飄々として斜め前を見つめながら歩いている。サラはそれを見て、何か決心を固めたように頷いた。そして、クライドにむけて柔らかな笑みを浮かべた。
「ありがとう、クライド。これからも色々聞いてくれる?」
「勿論だ、電話でもメールでも気軽にしてくれ。アンシェントにいるうちは翻訳機頼みだけど」
サラと笑いあいながら、クライドは二人のもとへ歩いていった。ノエルに向かって片手を上げると、彼は少しだけ微笑んで、クライドを軽く見上げて訊ねてくる。
「サラ、僕について何て言っていたんだい?」
「ノエル、クライド! 行こう! トニーとグレンが来たよ」
クライドが答えようとする前に、問題の彼女の声でクライドもノエルも固まった。サラは優しげに笑いながら、手招きしている。サラの背後に、グレンとアンソニーが見えた。
クライドは、一瞬だけ考えてにこりとした。サラは今、何気なくノエルの名を先に呼んだ。仲間達に手を振り、クライドは歩いてきた道を引き返す。さりげなくノエルがサラに近づいたのを見逃さなかったが、あえてもう振り返らなかった。
「クライド、知ってる? エディがね」
何があったのか知らないアンソニーは、クライドを見つけるなり満面の笑みで話し始める。彼の話によると、エディは今年初めて漁船で遠洋漁業に出向くらしい。職業体験ということで、学校から出航の許可が出たのだそうだ。学校は1年休学になるが、これで夢に一歩近づけると言ってエディは喜んでいたという。満面の笑みを浮かべた彼の姿は容易に想像できた。
「出航が明日だから、エディに会えるの今日だけなんだ。出航記念で宴会やるから皆つれて来いって、スーさんに言われたんだよ」
浮かれた様子で言う彼が、その宴会に行きたいと思っていることは明白だった。だから彼に誘われる前に、クライドのほうから頷いた。
「じゃあ、折角だし」
答えると、アンソニーはとても嬉しそうにした。エディや漁師達に会えなくなるのは寂しいが、クライドたちは本当にタイミング良くここに来ることが出来たと思う。
「兄貴とブリジットも誘いに行こうぜ? ほら、早く。会うの久々だなあ」
楽しそうにグレンが言い、クライドの肩を叩いた。クライドはノエルと顔を見合わせて、少し笑った。あの店に行ってブリジットと会った時にグレンが発する第一声が、とても楽しみだ。
「じゃあ、行こうか」
クライドがそういうと、友人達は頷いてついてきてくれる。これからどうするか具体的なことはまだ決めていないが、後回しでいい。
クライドたちは漁師に会うために、宴会場に向かった。
こんにちは。
作中の「従姉違い」という表現についてですが、これは「従姉の子供」という意味です。
よく考えたら『従姉の子供』を表現する言葉を知らなかったので、思わず検索しました。