第三十八話 実験開始
朝になって目が覚めたのは携帯のアラームのせいでも緊張のせいでもなく、ミンイェンの大声のせいだった。まだ眠いのに、ミンイェンはクライドのベッドの枕元に手をついてぴょんぴょん飛び跳ねている。ガキかよ、と呟いてやった。
「やったあ! やったよっクライド、装置が完成したんだ! あとは君達の調整が終われば、リィが生き返るんだ! ねえこんなに嬉しいことってある?」
「……うっさい」
まだ寝かせて欲しい。けれど眠気にぼやける思考が沈むたび、ミンイェンが耳元できんきん騒ぐ。煩い。
「ねえクライド起きて! 起きてったら、クライド! 調整しよ調整、ノエルはもう協力してくれてるよ!」
ハイテンションすぎる彼の声に苛立つ。目を擦りながら起き上がると、ミンイェンはクライドのベッドの周りを跳ね回りながら満面の笑みを浮かべている。頭をかきながら欠伸し、もう一度寝ようとすると、ミンイェンはそんなクライドの腕をぎゅっと掴んで寝るのを阻止する。
「早く顔洗ってご飯食べて僕の部屋に来て! 三十分で済ませてね、ばいばい!」
ミンイェンはこうして、嵐のように去っていった。気づけばアンソニーとグレンはもう朝食を食べ始めていたが、彼らもまだ眠そうだった。
いつだったか、ないと不便だからといって小さなテーブルを持ってきてもらったが、それはこの白いだけの無機質な空間に調和しつつも生活感を与えてくれる不思議なアイテムだ。そこでグレンとアンソニーが食事をしているところなんかを見てしまうと、ここが研究所であることなど思考からすぐに外れていく。
「おはよ」
「おはようどころじゃねえよクライド、今何時だと思う?」
グレンは不機嫌そうに言い、半分くらい食べたホットドッグにケチャップをかけなおしている。その隣で、アンソニーはチョコチップの練りこまれた甘そうなパンを食べていた。
「六時?」
答えてから、携帯を見ればいいと思い立った。ベッドに戻って枕元から携帯を取ると同時に、アンソニーが面倒くさそうにため息をつく。
「正解は四時でしたー。ミンイェンってば、三時半くらいにきてずっと煩いんだから。ノエルはいつもの凝縮されたコーヒー二杯くらい飲んで、パンちょっと食べて行っちゃった。短い間でもサラと話してから来るって」
この凝縮されたコーヒーというのは、ノエルのコーヒーにグレンがつけた名である。ノエルの淹れるコーヒーは何だこれと思うぐらい苦く、それでグレンが成分を凝縮しているなどと言い出したのだ。クライドもその意見には賛成だった。一口でも飲んだら、あの味は半日くらい口の中に残りつづける。
「クライドの分もあるから、適当に食えよ。クッソ、タイミング悪いのなんのって…… シェリーは昨日の夜中からセルジとノーチェに連れられて国外だ。ノーチェの新作映画の、プレミア上映に行くんだと。今飛行機ん中だから連絡とれねえや」
「まじか…… というか、ミンイェンのことだからその辺わかってシェリーをノーチェたちと同行させた感じがあるな」
「用意周到なこった。とっとと終わらせてシェリーを待とう。帰ってくるの明後日だってさ」
「だな」
ホットドッグの残りを口に放り込みながら、グレンはテーブルの上に放置されたかごを寄こす。中にはメロンパンやらチーズトーストやらが入っていた。クライドは寝起きでまだものを食べる気分ではなかったが、仕方なくかごの中に手を伸ばした。食欲はあまりなかったから、メロンパン一つを食べきったところでクライドが再びかごに手を伸ばすことはなかった。
洗面台で身支度を整え、パジャマ代わりに着ていた服を軽装に着替える。そして携帯をポケットに入れて、クライドは部屋の外に出た。グレンとアンソニーも、それぞれ大あくびをしながら部屋の外に出て眠そうに目をしばたかせている。
「もう! 遅いよ三人とも、早く来て!」
いきなり大声で叫ばれ、びくりと肩を跳ね上がらせる。眠気は一瞬だけゼロになったが、ミンイェンが手招きながら走っているのを見ていたらまた復活した。欠伸が出てくる。グレンもアンソニーも眠そうにしながら、ミンイェンに急き立てられて面倒臭そうに小走りになっていた。
ミンイェンの部屋は相変わらず『芸術品』だらけだったが、その殆どが壁際にぴたりとくっつけてある。広くとられた中央のスペースには、四人掛けのテーブルがある。この研究所らしい真っ白なテーブルには、白い箱のようなものが置いてあった。箱から伸びた四本のコードには、握りこぶし大の楕円形をした銀色の金属がついている。一体何の装置だろう。
「あれ、ノエルは」
辺りを見回しながら、グレンはミンイェンに問う。
「もう調整終えて準備中! クライドたちが終わるまで、待機しててもらってる」
ミンイェンは白衣のボタンをかけながらクライドを見てにっこりと笑う。グレンは早速椅子に座って、まだ指示もないのに実験器具を観察していた。アンソニーも普通に椅子に腰掛けて、グレンの手元を覗き込むようにして実験器具を見ている。クライドは少し迷ったが、ミンイェンが何も言ってこないのでグレンの前に席をとった。
「ねえ、これが蘇生用の実験道具じゃないの?」
不思議そうに声を上げたアンソニーに、ミンイェンは白衣のポケットに手を突っ込みながら首を横に振る。
「ううん、違う。これは皆の魔力の振動数を均一化する道具なんだよ。こうしておくと魔力の相互干渉で供給側がショック死する可能性も少なくなって、あらかたの不具合が防げるんだ。たとえば魔力の逆流が負担になって放出を止めたとたんに供給側が心停止したりとか、逆に蘇生対象の肉体が魔力を受け切れなくて破損するとか…… そういうことがなくなる。この装置を開発するためにマーティンが何度倒れたことか」
「言ってることよくわかんねえ」
両手を腰に当てて得意げに説明してくれたミンイェンだが、グレンに一蹴されてがっくりと項垂れた。
「俺も」
「僕もー」
続いてクライドたちが同じ意見を述べて頷いてやれば、ミンイェンは低く呻いて『うっそ』と頭を抱える。
「折角説明してあげたのに。理解してよ!」
「無理言うなよ。眠いもん」
「そうだよ」
必死に訴えるミンイェンと、頬杖をついて欠伸しながら片手をひらひらとふるグレン、そしてテーブルに突っ伏して寝そうになっているアンソニー。彼らを見ていると何だか笑えて、ここが今まさに実験が始まろうとしている研究室なのだというのが嘘のように思えた。
「とりあえず、その丸いやつあるでしょ」
丸いやつなど大雑把にと表現されても、箱かコードか金属製の楕円形をした塊しかないのだ。手に取るべきものはもう決まっているだろう。クライドは丁度携帯と同じくらいの大きさの楕円を手にとってみる。想像していたより重くて驚いたのと同時に、持った瞬間に一瞬だけ電気が走って更に驚いた。ミンイェンはそんなクライドに目もくれず、ゆっくりとテーブルの周りを歩いて一周しながら説明を続ける。
「その上に、左の手首を乗っけて。てのひらが上になるようにしてね」
指示通りに動き、クライドは手首の関節辺りを金属の上に載せた。ひやりと冷たい感触があったが、すぐに金属の温度は変わる。どうやらただの金属ではないらしく、その携帯ほどの大きさの金属はすぐにクライドの手と同じ温度になった。
「いいかな? じゃあ、十分間外さないでね」
ミンイェンはテーブルに歩み寄り、箱の側面に手を這わせて何らかのボタンを押した。それがスイッチだったらしい。白一色のこの箱の中に、一体何が入っているのかクライドは気になってしまう。ミンイェンは軽々しく手馴れた動作で扱うが、きっと中身はクライドのわからない次元のもので出来ているのに違いない。
「……なあ、何も起こらないんだけど」
「これからが問題だよグレン、均一化はもう始まっているから。ちょっとずつ変化が現れるはず」
グレンとミンイェンの会話を聞きながら、暇なのでアンソニーに声をかける。
「トニーは何か」
起こった? そう訊く前にいきなりグレンが大声をあげて椅子から飛び上がった。すかさずミンイェンがグレンの手を押さえ、金属のかたまりから離れないようにする。
「痛っ! なんだこれ」
グレンは左手から顔を背けるようにして、痛みを堪えているようだった。クライドには、今のところ痛みはない。ただ、何となく眩暈のような感覚はあるのだが。アンソニーはけろっとした顔でグレンを見て、首を捻っている。
「僕は何もないよ? グレン」
「するだろ? 血管ん中を何かの塊が通ってるみたいな気持ち悪い感覚」
「しないって! え、そんなに気持ち悪い?」
「ああ、痛さも半端ない」
グレンだけ、何故だろう。クライドには痛みもなければ気持ち悪さもない。時々意識がふわりと浮くくらいで、それだってほんの一瞬のことである。そもそもこの現象だって、ただの眠気かもしれない。不思議がっているのはアンソニーも勿論同じで、一同を見てミンイェンがにっこりと笑みを浮かべる。楽しそうな顔だ。
「グレンは特に魔力の波形が荒いんだよ。トニーはもともと波が緩やかで均一化されやすいし、これは標準をクライドに合わせてるからクライドは何の問題もないし。君達に二週間待ってもらったのは、機器を作る傍ら魔力解析を行ってたのもあるんだよね。この機械便利でね、理論値と実測値のズレを徐々に正していく調整法を採用してるんだ。魔力の反発は暫くすればおさまるよ」
うへえ、とグレンが呟いた。今の話は半分も理解できなかったに違いないが、まだしばらく耐えなければいけないということはばっちり理解したようだ。クライドはミンイェンの話にでてきた『標準』というのを詳しく知りたかったが、きっと小難しい話を延々とされることになるだろうから訊くのはやめておいた。代わりに訊ねたいことはまだあったから、一つきいてみる。
「じゃあ俺が微妙に貧血っぽいのは何で?」
「それは、クライドも機器に魔力を通してるからだよ。ここ二週間の実測値と今日の値を取り込んでるところ。魔力回復薬、エルフの薬をヒントに作ったのがあるからそれ飲んでね」
こうしててきぱきと指示をしてくるミンイェンは、何だかいつもの子供のような彼とはどこかが違った。彼は始終楽しそうにしているが、その反面で仕事は完璧にこなしていた。机のパソコンから電波を飛ばして装置を動かしているようで、彼はモニターに映し出される波形をチェックして何事かをノートに書き込んでいる。
「グレンだいじょうぶ?」
「痛くはなくなってきた」
「そっか、良かった」
二人の会話をぼんやり訊いていると、グレンが器具ごしにこちらを覗き込んだ。
「クライド、お前は貧血平気か?」
「大丈夫だと思う」
答えたものの自信はなかった。いつ倒れるか解らないのが貧血だ。平気だと思っていても、立ち上がったとたん急に倒れたりすることだってある。
ミンイェンは暫くモニターを監視していたが、やがてこちらに来て器具に触れた。すっと何かが左手から抜けるような感じがしたのを最後に、感覚は普通になる。貧血気味なのは治らなかったが、左手の違和感はすぐにおさまる。
「はい、クライドはこれ飲んで。グレンとアンソニーは準備室でノエルと準備して。実験室はこの部屋の正面だから、そっちへ移動! レンティーノがいるから、説明聞いといてね」
有無を言わせない勢いで、ミンイェンはクライドに白い紙コップを押し付けてグレンたちを外へ出した。何だか早くしなければいけないような気がして、クライドはコップの中身を一気に飲み干す。苦味もなければ甘味もない、けれど少し渋い味のする水だった。ミンイェンは波形の出ていないパソコンの画面を閉じ、グラフのようなものに数値を記入してからパソコンも閉じた。腕にパソコンを抱えたミンイェンは、コップを置いたままついて来るようクライドに告げた。
「いよいよだよクライド。僕の九年間が、ようやく実を結ぶんだ!」
彼は言いながら、自室の正面にある実験室のドアをカードキーで開いた。流れてくる消毒液の匂いに、軽く息を吸い込む。真っ白いだけの壁を抜けて部屋に入れば、先に中にいた面々が一斉に振り返る。
「お待ちしておりましたよ」
微笑むレンティーノが手に持っているのは半透明のコードだ。見れば先に行った三人は、部屋の奥からノエル、アンソニー、グレンの順に等間隔を保ちながら椅子に座らされていた。レンティーノはいつものスーツの上から、しわ一つない綺麗な白衣を羽織っている。全く違和感がなく、威厳ある研究者という風格だ。
「クライドも早く座って」
楽しそうなミンイェンに背中を押され、一番入り口側の空席にクライドも座った。座った途端に背後から首に黒い紐のようなものをかけられる。一瞬絞め殺されるのかと思ってしまったが、黒い紐をかけたのがレンティーノであることを知ってクライドは大人しく椅子に座ったままでいた。
「バックアップチームはセルジとノーチェ。メインは僕とレンティーノ、ハビとマーティンはケアに回ってね」
ミンイェンの澄んだ声で指示が飛ぶ。部屋の隅のほうに、気づかなかったがハビとマーティンもいたようだった。二人とも白衣を着ているが、マーティンの白衣はしわだらけでハビのものは洗濯したてのように綺麗だった。
クライドの見ている前で、レンティーノは部屋の中央においてあった円筒形の水槽に歩み寄った。水槽の横から伸びた四本のコードを抜けないかどうかチェックしているようだ。レンティーノの行動を見ていると、乱暴な手つきでマーティンにコードを渡された。どうやら、クライドを含めた四人で一本ずつコードを持っていなければならないらしい。
「コードは手首に一周半巻きつけて。グレン、君は巻きすぎ。二周半もいらないよ」
ハビが歩いてきて、各自の手元を確認していく。クライドのところにもきた。あれだけの拒絶を受けた後なので冷たい対応をされるのかと思いきやそうではなく、全くいつもどおりの彼で拍子抜けした。
思ってみれば彼はいつだってそうだ。一年ぶりに再会した時だって彼は普通だったし、そんな彼を見ていると子供みたいな気まずい反応をする自分が何だか恥ずかしく思える。
「左で良い? 利き手の方が魔力を操りやすいって統計結果があるんだけど」
「あ、じゃあ変えます」
どう考えても緊張でがちがちな自分と、いつもどおりの、けれどいつもと違って白衣を着たハビ。圧倒的に優劣は決まっている。目に見えて解る。別に何かを争うわけではないけれど、あんな大胆な発言をした手前、クライドとしてはハビと対等に接していたかった。けれどハビはいつだって、クライドより何段も上にいるのだ。
「準備はよろしいですか」
穏やかで柔らかいレンティーノの声に、手首から視線を離して顔を上げる。すると、ミンイェンがそれぞれの顔を順に見ながらまた注意事項を喋り始める。
「自動ドレイン機能の開発はできなかったんだ。だから皆、合図があったらちょっとずつ自分の魔力を水槽に送って欲しい。直接想像を働かせちゃうと、魔力を余分に使うから禁止。ノエルとグレンも、直接自分の魔法を使っちゃだめだよ。成分動かすのも見えない手でコード握りかえるのもだめ。トニーは問題ないかもしれないけど、予見するのはだめだからね」
そう言い置いて、ミンイェンは軽やかな足取りで水槽の傍に近寄った。
「さ、実験はじめるよ! ああ、なんかドキドキしてきたっ」
「緊張してるのは僕らだよ、危険なのは僕らの身なんだから」
「でも生き返るのはリィなんだよ? 早く生き返らないかな、リィ」
アンソニーと会話しながら、ミンイェンは円筒形の水槽の正面にぺたりと座る。そこに陣取って、そのまま実験に臨むようだ。
「ミンイェン、始めるのでしたら離れてください」
声をかけたレンティーノに、ミンイェンは首を横に振って見せる。水槽の表面を触り、断固として離れない様子だ。
「やだ。僕、ここにいたい」
「仕方ありませんね。……異常を感じたらすぐに離れるのですよ」
まるで駄々っ子とその親か何かのようである。若干の呆れを覚えるが、呆れよりも少し哀れみが強く胸に残った。もしもリィが生きていて、ミンイェンと二人で暮らしていたら。彼ももう少し自立した大人になったのだろうか? そう考えてしまうと、目の前の水槽に入った死体の生前を思ってしまって気持ちが悪い。生き返らせてしまえば問題はない。水に浸かった死体が空気を求めてもがき、ガラスの水槽を蹴倒して出てくればそれで、
「う」
ちょっとリアルすぎる想像に気持ちが悪くなった。だめだ、もう視界にあの水槽を入れてはいけない。
俯いたクライドの後頭部に、誰かが触れた。振り向けばミンイェンがこちらに戻っており、長い包帯をクライドの後頭部から巻き始めようとしていた。目が合うとミンイェンは、何も言わずにクライドの首を正面に向けた。
「クライドが僕の芸術品苦手だって知ってるから。グレンも欲しい? トニーは魔力封じのアイマスク用意したけど」
視界は潰された。手首に感じるコードの固い感触や、つめたい椅子の感触が何だかリアルに伝わってくる。聴覚の隅の方で、水槽がこぽこぽと音を立てているのを捉える。あまり気にならなかった音は、今では微細に聞こえる。
「うわあー、何これすごい。透視できないや」
どうやら、アンソニーも目隠しをしてもらったらしい。グレンも隣で暑いだの髪が乱れるだのとぼやいているので、彼もおそらくそうだろう。ただ、ノエルはどうなのだろう。探究心の強い彼のことだから、リィの蘇生を目を背けずに最後まで見届けるに違いないとクライドは思う。
「じゃあマーティン、機材関連よろしく」
「ああ」
マーティンは返事して、少し離れたところへ向かって歩いていく。音しか聞こえないと、彼がどこで何をしているのか見えなくて少し不安でもある。
真後ろで拳銃を突きつけていたりしないだろうか。自分ではなく、グレンに拳銃を突きつけていたらクライドの位置からではなかなか気づくことができない。
あの男ならやりかねないと思うが、ミンイェンがこの場にいるから心配はないか。クライドはなるべく背後から意識をそらさないようにしながら、首を傾けて骨を鳴らした。
「では…… これより、リィ蘇生実験を開始。ポジション確認、バックアップチームはセルジとノーチェ。メインは僕とレンティーノ、ハビとマーティンはケア」
慣れた口調でミンイェンはそういい、それに三人ばらばらで返事が届く。
「はい」
「おう」
「うん」
声の聞こえた場所はばらばらで、クライドから少し入り口側に離れた場所からレンティーノ、部屋の中央から少し奥へ行った辺りからマーティン、恐らくクライドから一番遠い壁際からハビの声が聞こえた。遠くに行くにつれて距離感はわからなくなっていくが、彼らは四人で別々の場所で待機しているようだった。
「メインスイッチ、どうぞ」
ミンイェンの声は凛と響き、どこかでかちりと音がした。




