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第六話 琢也
俺は、足早で風呂場へと駆けていた。
部屋を出てしばらく廊下を直進したら突き当たりを右に曲がれば、そこは風呂場だと聞いていた。
「…ここかぁ」
風呂場に着いた俺は、とりあえず琢也を呼んでみた。
「おーい!琢也、いつまで入っているんだ?」
……。
中からは、何も返事がない。
風呂場の明かりがついているってことは、まだ琢也は風呂に入っているってことだ。
「あいつ、マジで風呂で寝ているのか?」
もう一度、更に大きな声で名前を呼んでみた。
「おーい!!琢也ー!聞こえているかー!!起きろー!?」
…
……
やはり何の応答もない。
「…これだけ、大声で呼んでも気付かないなんて」
琢也は、そこまで寝起きが悪い方ではないはずだ。
妙な感覚を覚え、俺は風呂場のドアに手をかけた。