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最終話 朱音
「朱音、無事だったか!」
側に駆け寄り朱音の安否を確認し、おもわず肩を下ろしてしまった。
当の朱音は、何のことやら解らないといった顔で俺を見ている。
「とにかく説明している暇がない、直ぐにここをでるぞ!」
そう言い放ち玄関の扉を開けようとした瞬間……背中に激痛を感じた。
「なんで、帰らないといけないの?」
俺は、一歩後ずさり朱音を見ると手が真っ赤になっているではないか。
そして、朱音の手にはナイフが握られていた。
「あ…朱音、な、何で…」
朱音は満面の笑みを浮かべていた。
「昨日は、久しぶりのご馳走だったね……啓に琢也、本当に美味しかったよ」
…そうだ。
この旅行を計画したのは…朱…。
「聖摩のことは、私が自分で料理してあげるね」
そ…んな、あ、朱…音。
刺された場所を、手で抑えながら、そのまま倒れ込んだ。
視界がぼやけていき意識が薄れていく。
…そう、まるで深い眠りにつくかのように………。
あなたは想像出来るだろうか?
人知を越えた光景に人が遭遇した時、その人はどうなるのかを…。