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第十四話 狂宴
男の包丁は、啓の左胸を深く突き刺した。
まだ、やるつもりなのか……
もう…止めてくれ。
啓は、もう……もう死んでいるじゃないか!
男は、そのまま包丁をグリグリと回しだして胸に空いている傷口を広げだした。
ある程度の大きさに穴が広がると包丁を抜き取り、代わりに今度は手を傷口に入れだした。
「グチャッグチュッ」という、ねっとりしたものを掻き回す音が、傷口から聞こえてくる。
そして、男はゆっくりと手を取り出した。
その手の中には、「トロ~」とした丸い塊が握られている。
啓の………心臓だ……。
その後も、眼球のくり抜きや舌の切り取りといった細かい作業が目の前で行われた。
俺は、理性を保つのが精一杯だった。
啓が人としての原形を崩されていくのと同時に、俺も、また尋常ではない精神状態の中、自分自身を見失っていった。