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6.願いを込めて

「ごめんなさい、お香ちゃん。私がおまじないなんて勧めたから、風邪なんて……」


 香の枕もとで、多恵はうなだれて言った。

 香は布団から手を出して、多恵の手をぎゅっと握った。香の顔は熱で赤らみ、額に氷嚢も乗せていたが、表情は明るく輝いていた。


「謝らないで。お多恵ちゃんのおかげで、お見合いは中止になったの。私、感謝しているんだから。それにね」


 香は恥ずかしそうに笑い、手招きした。多恵が身をかがめて、香の口元に耳を寄せる。


「とっても素敵な方に助けてもらったの」


 多恵は目を丸くして香を見た。香は、はにかんで話した。


「どちらの方なの?」


 多恵の問いに、香は首を振った。ずりおちた氷嚢を多恵が受け止める。


「聞きそびれてしまったわ。でも、母様がご存じの様子だったから、風邪が治ったらお礼に行こうと思っているの」


 香の弾んだ声に多恵は小さく微笑み、氷嚢を文机に置こうと振り返る。文机の上に置かれた冊子に気が付いて、聞いた。


「これは?」


「ああ、枯太郎の写真ですって。もういらないのに、母様が置いて行ったの」


 多恵は冊子を開いて、写真を眺めながら言った。


「顔立ちは、とても宜しい方だったのね」


「大福の君ほどではないわよ」


「大福の君……。大福のように福々しかったのかしら?」


「とっても素敵な方よ! 枯太郎とは違うの」


 香は口を尖らせて言うと起き上がって、冊子の写真を覗き込んだ。

 写っていた男性は、屈託のない少年のような笑顔をしていた。

 香は言葉にならない声を発し、多恵の肩を大きく揺すった。多恵は目を回して、冊子を取り落とした。


 

 数日後。

 すっかり元気になった香は、せっせと人形を作っていた。花太郎人形とおそろいのリボンをつけて、二体の手を赤い糸で縫いつける。


「どうか花太郎さんと結ばれますように」


 願いを込めて。


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