天国?地獄?
すっかりおとなしくなった優平。
しかし頭の片隅には、看護師の美波さんにばれないように、どうやって荷物を取りに行くか思い悩んでいた。
「あなたが優平の担当さん?」
おばさんは少し安心したような表情を見せる。
「私がこの船に入ったころはね、人手不足で看病してくれる看護師さんなんていなかったのよ。だからちょっと安心したわ。」
どうやら、おばさんは僕の看病のことで心配していたらしい。
一人でも大丈夫だが、気にかけてもらえるというのはうれしいものだ。
「そうだよ、大丈夫だって。別に一人で歩けるし看護師さんもついてるからさ。」
とにかく早くおばさんには帰ってもらわなくて抜け出す隙も作れない。
それとなく帰っても問題ないような雰囲気を作る。
「そうね。優平も、もう子供じゃないし。私は仕事に戻るわね。」
そう言って、部屋を出ようとするおばさん。
「では優平のこと、よろしくお願いします。」
美波さんへそう、言い畑に戻っていったようだ。
「いいお母さんですね!」
どこか嬉しそうな笑顔でそう言った美波さん。
「あれ、僕のお母さんではないんですよね。」
確かに、歳の差的にも距離感的にも間違えてもしょうがないとは思う。
しかし、残念ながら母親ではないのだ。
「えっ!すみません!どこか親しげだったもので、てっきりお母さんなのかと!」
必死に頭を下げて謝る美波さん。
頭を動かすたびに香る花のような甘い香りと、どこかほっとけないような彼女の愛らしさが、いま優平の心を揺さぶっていた。
「いいんですよ。それくらい仲がよさそうに見えるなら、こっちとして嬉しいですから!」
実際、そんな風に見えるだろうなとは勘付いていたため、悪い気分など優平にはなかった。
「それならいいんですけど…」
申し訳なさを感じている美波さんを少しでも元気づけようと話を変える。
「そういえば、美波さんが僕の部屋に入って来たってことは何か用事でもあるんですか?」
気になっていたことを尋ねてみる。
「そうでした!今、優平さんの身体機能を確認するようにって主任に言われて来たんでした!」
その一言でさらにドキッとする。
「あの、それって…」
思春期男子の妄想力をもってすればよからぬ方向への想像は容易いものであった。
目の前には、究極の美人。
淡い期待と早くなる鼓動と共に美波さんの唇に視線が釘付けになる。
(もしかして……ある!?)
そんな中、美波さんの口から出た言葉は、
「はい!小学校で、やっていた体力測定です!」
(????????????????????)
優平の脳は理解が追いつかなかった。




