美しき人よ、天使のごとき
「………い…………へい…………ゆうへい!」
ぼんやりとした視界の中、大きな声の呼びかけで意識が目覚めていく。
「優平!大丈夫なのかい?」
その声の正体は、手を握り、心配した顔をする友達のおばさんであった。
「おばさん…ここは…」
意識がはっきりしたところで見覚えのないこの部屋を見回す。
「ここは船の病室よ。もっとも、この部屋は個人部屋だから病室という感じはあまりしないけどね。」
どうやら、病室に運ばれたらしい。
夢かと思ってしますほどに極上の環境であった。
目に優しい間接照明に、ふかふかのベッド、暖かい毛布に、適度な室温。
実に心地よい空間である。
「あなた、もう2週間も寝たきりだったのよ」
「えっ!まじで!?」
2週間という長い時間、寝たきりという言葉にショックを隠し切れない。
少し落ち込みつつも、なぜ今病室に居るのか、なぜ2週間寝たきりだったのかを考え、自分の最後の記憶を思い出してみる。
すると、突然ライトを目に向けられたような衝撃で、頭が痛いくらい鮮明に気絶前の出来事を思い出した。
「あのチンピラは!?おれの荷物は!?」
急いで、自分のモノがないか、あたりを見回す。
「落ち着いて、優平くん。あなたの荷物無事だと思うわ。」
おばさんがゆったりとした声で落ち着かせるように言った。
ただ一つ、引っかかる点がある。
「無事だと思うって?」
断定ではないことである。
「あなたの周辺に散らばっていた荷物は、いま警察の方で保管してるの。あなたのものっていう確認が取れ次第渡しに来るって言われてるわ。」
とのことらしい。
「早く取りに行かなきゃ…」
はやる気持ちと共にいち早く荷物を取りに行こうとベットから降りようと試みる。
「ダメよ!起きたばっかりなのに外にいくなんて!」
それを必死に止めようとするおばさん。
無理やりにでも警察のもとに行こうとする中、病院の扉が開く。
病室へ入ってきたのは、天使の様な純白のオーラをまとった美しい看護師さんだった。
胸元まで伸びる茶髪にふわっとまかれた色っぽい大人のワンカール。
この世にこの女性を超える美貌を持つ者はいないと思わせるような美しさ。
見るもの全てを、釘付けにするような甘いルックスの持ち主が部屋の中に居るというだけで、心拍数が上昇する。
「えーっと、優平さんの病室であってますか!」
その口からハープのごとき透き通るような声で自分の名前を呼ばれさらに心臓が高鳴る。
「はい…!」
荷物を取りに行こうとすら忘れられるほどに、その声に、オーラに、美しさに見惚れてしまっていた。
「今日から、退院まで優平さんの部屋を担当する看護師の長内 美波です!よろしくおねがいしますね♪」
まさかの、この美人看護師さんが僕の担当であった。
「恐れ入ります。よろしくお願いいたします。」
出歩こうとする意志を素早く隠し、すっかりおとなしくなってしまった優平であった。




