手打ち
残っていた一人を続けざまに行動不能にしてやろうとするが、リーダー格の「ソウゴ」と呼ばれる大男に阻まれてしまう。
「今お前から取ろうとしたものは全部返してやる。だから今回はお互い手打ちにしよう。」
俺は理解が追い付かなかった。
「自分たちがピンチになったら逃げるのかよ。」
今の俺には目の前の敵を痛めつけ、手を出したことを、生きていることを後悔させてやるという、残虐な衝動で突き動かされていた。
「そうだぜソウゴ。ここまでやられておいて引き下がれるかよ!!」
残っていた男が啖呵を切り、ソウゴの指示を無視して襲い掛かろうとする。
俺の方へ来ると感じた、その瞬間――
「……馬鹿が」
ソウゴの手刀が男を気絶させた。
白目を向いたまま、その場に崩れ落ちる。
「何のつもりだよ。敵に情けでもかけようってか?」
優平の殺気が、ソウゴへ鋭く突き刺さる。
しかし、意にも介さない素振りで、床に落ちていた袋の中から、金のバッチと時計を手に取る。
「ほらよ」
突然、その二つを投げ渡してくる。
反射的に受け取りはするが、雑に投げ渡されたことに強い苛立ちを覚える。
「俺は、お前とやり合う気はない。お前も怪我が酷い。早く病院に行け。」
そして自ら気絶させた男を担ぐ。
「つまり、自分は手を出してないから戦いたくないってことかよ?仲間がピンチなんだぜ?」
そう言いながら横でうずくまる男を見下ろす。
「もう一度言うが、俺はお前とやり合う気はない。今やったところで、俺が勝つ。」
その通りなのに、どこか挑発ともとれる発言であった。
体格差も激しく、こちらは満身創痍。
現状勝ち目は無いに等しいだろう。
そんな当たり前なことを、頭では理解していた。
そんな中、俺が出した答えは、
「じゃあ試してみるかぁ?!」
心の中の衝動に従うことだった。
拳を固く握り、乱れた呼吸を整えるように息を吸う。
ぼやける視界であっても大男に向かおうと左足を踏み出す。
だが——
グラァ……!!
世界が傾く。
平衡感覚を失い、膝から崩れ落ちてしまう。
俺の体は既に限界だった。
痛みを感じていなかっただけで、実際には立つことも難しいほどダメージを受けていた。
呼吸も乱れ、だんだんと視界がぼやけていく。
「ク…ソ………が…。」
そう言い残し、握り締めた時計とバッチと共に、俺の意識は途切れた。




