気になる
目の前のご馳走をひたすらに食していると、
「なあ俺にもくれよ!」「一口だけでも!」「頼む兄ちゃん!」
周りで見ていた酒飲みたちが、今にもよだれを垂らしそうな顔で懇願してくる。
そんなに食べたそうにされては、こちらとしても食べさせたくなるものだ。
「こういうのはみんなで食べるもんですよ!!!」
優平の許しを皮切りに、次々と料理たちに手が伸びる。
食欲という生物としての強い欲求がこの場所に一体感をもたらしたのだった。
「タイさん!材料揃えるからもっと作ってくれよ!」
もうすぐ食べつくしてしまう料理たちを見て、酒飲みたちが追加をお願いする。
顔をしかめて、悩むタイさん。
少しの間沈黙した後、大きなため息をつく。
「しょうがねぇなぁ。今回だけだぞおめぇら!」
「「「ウオオオオオ!!!!」」」
みんなで一斉に、店の販売所に押し掛ける。
それに伴って人の波も移る。
「じゃあそろそろ帰るかな。」
ちょうどいい頃合いでもあるため、この場所を離れることにする優平。
ふと周りを軽く見回すとイケおじがまだ酒を飲んでいた。
相変わらず飲んでいる量は気になるが、深く考えず、荷物をまとめる。
「何だ、もう帰っちまうのか?」
すると、タイさんに呼び止められた。
「そうですね。人が少ないうちに帰ることにします。」
その言葉に少し残念そうな顔を見せる。
「そうか、まあ気が向いたらまた来るといいさ!俺が居る時はあんたに旨い飯、作ってやるよ!」
いい人特有の優しい雰囲気を感じた。
「こちらこそ、おいしい料理ありがとうございま…」
「タイさん!とりあえず串焼き追加で頼む!」「こっちのホイル焼きも!」
感謝の言葉を伝え終わる前に、買い終わった酒飲みたちが集まってくる。
タイさんは目配せで「行け」と伝えてくれた。
そうして、持ち寄り屋を後にした。
帰り道、通りは人で賑わっている。
直近の慌ただしい出来事から、いつもの日常へと戻ってきたことに思わず口角が上がる。
いつもの日常を味わいながら、無事病院へと到着した。
窓口に向かい許可書を返した。
「さっさと病室に帰んな。」
なぜか窓口のおばちゃんにせかされるような形で病室に返された。
「なんだあのおばちゃん。」
そうして病室の扉を開けると、布団を整えてくれている美波さんの姿があった。
なんて優しいんだと優平は思うが、実際は業務内容の一つであるのだ。
そんなことも知らず舞い上がっている優平に、
「おかえりなさい!落とし物ちゃんと見つかりました?」
にこやかに話しかけてくれる美波さん。
「無事に取ってきましたよ。ほら!」
いろいろあって無事に取ってくることのできた自身のカバンを美波さんに見せる。
「よかったです!でも優平さん。こっそりお外で何か食べてきましたね?」
的を得た発言にビクッと体が反応する。
誤魔化すべきか悩むが、
「そう…です…。食べました…。」
素直に白状した。
「本当は、病院食以外はダメなんですよ~?今回は見逃してあげますけど、次はないですからね~。」
優しく怒られてしまった。
これが女の勘とでもいうのだろうか。
つい気になってしまう。
「何で僕が外で食べてきたってわかったんですか?」
「ん~。そーれーはー、ですね~?」
布団を整え終わった美波さんが、にやにやしながら近づいてくる。
「匂いです!」
「匂い!?」
慌てて臭くないか自身の服に鼻を近づけて確認する。
しかし、臭いのか臭くないのか全く分からない。
「大丈夫ですよ!匂いって言ってもお魚の美味しそうな匂いです!」
美波さんが笑って教えてくれた。
とりあえず臭いというわけじゃなさそうで一安心する優平だった。




