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平和大船  作者: 藤本レン


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20/22

プロの手際

賞賛の声を浴びる優平。


「さっきのすごかったぜ!」「兄ちゃんよくやったな!」


などと言われるが、少し複雑な心境だった。


出入口手前での、何者かの手助けがなかったら、あのまま逃がしていただろう。


苦笑いをしていると奥からスキンヘッドの男が現れた。


「さっきのはシビれたぜ!兄ちゃんの魚たち、調理してやるよ!」


「おっ!タイさんの飯が見れるのか!」「最強の料理人が腕を奮うのか!」


周囲の反応からして、美味しい料理が作れそうな人の気配がする。


ここはひとつ任せることにした。


「じゃあお言葉に甘えて、お願いします。」


「おう!任しとけ!」


そう言うと、早速調理が始まった。


「まずはネギだな。」


水でさっと汚れを落とし、白い部分を等間隔で輪切りにする。


一つはみじん切りに、一つは細く千切りにする。


ネギを寄せた後、次に魚へと手をかける。 


「ここの魚は処理済みでほんと助かるぜ。」


そう言い、頭を落とし、手早く三枚におろす。


二匹は三枚おろしにし、残りの一匹はぶつ切りにする。


「時間のかかるあら汁から行くか。」


すると少し大きめの鍋をを取り出した。


水を多めに入れておき、かまどの上に置く。


そこへ先ほどぶつ切りにした魚を入れる。


さらに、ほか2匹の頭や骨などと、細かくちぎったネギの青い部分、ビール一本分をまとめて鍋に入れた。


水があふれるのではないかと、心配になるほど具が詰まっている。


かまどに火をつけ、次の調理に取り掛かる。


三枚におろしたうちの一匹は、塩、コショウ、おろししょうが、千切りにしたネギと少量のビールと共に、アルミホイルで包んで網の上で蒸し焼きだ。


最後に残った一匹は、ブロック状に切り分け、串に刺し、輪切りのネギと一緒に刺した串など計32本を網で焼く。


ツボとハケを取り出し、ツボの中のソースを16本に塗り、塩とコショウを16本にふりかけ、焼き上げる。


一切の迷いもなく、ここまで手早く調理する動きはまさにプロの所業だった。


香ばしい匂いがあたり一面に広がる。


それにつられてほかの場所からも人が集まっていく。


「いい感じだな。」


串焼きがジュウジュウと音をだし、旨味があふれそうなくらいジュウジュウと音を立て始めた頃、串焼きを皿に移した。


ホイル焼きも網から皿へと豪快に移し、あら汁はみじん切りのネギと味噌を溶き入れた後、器によそってくれた。


「さあ、召し上がれ!」


自分の目の前に置かれた3つの品。


ホイル焼きと塩串の輝く旨味、テリテリと光るタレ、濃厚な出汁の色を見せるあら汁、そして今まで感じたこともないような美味を予感させる香り。


この美しさを前に思わず唾を飲む。


塩の串を手に取り、


「…いただきます。」


思いっきりかぶりつく。


「うんんんめぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」


魚でありながら、肉のようなジューシー感。


塩とコショウのシンプルな味付けでありながら、出汁のような旨味すら感じる。


「これほんとに魚か!!!!うんま!!!」


周りの目を気にすることすらできない程のおいしさに叫びまくる。


「このウォトリーっていう魚はな、鶏肉のような食感と味を持つ魚だからな。そこにこの特製の塩とコショウを合わせれば、さらに旨味を引き出してくれるってわけよ!」


それならば確かに串焼きが一番うまく食べられるだろう。


「タレも食ってみな!」


差し出された串からはタレが今にも滴りそうなくらいテリテリと光る。


タレ串を一口でほおばる。


甘く、コクのある味わいに、魚のジューシーさが絶妙にマッチして、


「タレもうめぇぇ!!!」


串焼きの塩、タレ、両方を味わった。


続いてホイル焼きの方もいただく。


口に入れると、ほろりと崩れるほどの柔らかさと、口いっぱいに広がるシンプルでありながらしっかりとした魚の旨味につい手が伸びてしまう。


「このサカシラって魚は、身は淡白だが、出汁は一級品でな。高級料理にも使われるくらいさ!」


つい米が欲しくなるような味わいだった。


二品をじっくり味わったことにより、期待が高まるあら汁。


器を両手で持ち、勢いよくゴクゴクと音を立てて、汁を飲む。


複雑に絡み合う魚介の出汁。


臭みやエグ味は一切なく、飲めば飲むほど、食欲を刺激されるような味わい。


「プハァ~!!!」


具の魚も食べてみる。


こちらも絶品だ。


柔らかくも、食べ応えのある大きさの身に、出汁の旨味が絡まり、噛むほどに奥から旨味が溢れてくる。


「うまぁぁぁぁぁい!!!!」


この料理たちの美味しさは生涯忘れることはないだろう。


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