通勤途中
通路を抜け、船の街の裏側へと足を向ける。
人通りの少ない大通りから、さらに細い配管の隙間へ。
そこは壁に落書きがあり、床も汚れていて、ほとんどの人間が避ける場所だった。
だが、俺はそこを通る。
何度かこの辺りを歩くうちに、ここが妙に静かで、誰にも邪魔されないことを知っていたからだ。
突き当りの角を曲がった、その瞬間だった。
ドンッ、と鈍い音がして、
何かと正面からぶつかった。
「……っ」
思わずよろけ、尻もちをつく。
顔を上げた先にいたのは、
俺より二回りは大きい男だった。
さらにその背後には、仲間のようなガラの悪い男が四人。
「……何だ、お前」
低く、荒れた声が静かな通路に響く。
「す、すみません……」
反射的にそう謝った。
だが次の瞬間、視界が一気に揺れた。
ドゴッ!!
体が宙に浮き、背中から壁に叩きつけられる。
息が詰まり、肺の中の空気が一気に吐き出された。
「ソウゴにぶつかって、無事で済むと思うなよ?」
取り巻きの一人が、面白そうに言う。
(まずい……)
そう思ったときには、もう遅かった。
脇腹に強烈な蹴りが入り、俺は地面に転がる。
「あーあ、逃げようとしなきゃ、こんな目に遭わなかったかもな」
男たちが、獲物を見るような目で近づいてくる。
その光景を見ながら、
俺の中には奇妙なほど静かな思考が浮かんでいた。
(……もし、こいつらが死んだら)
(その家族は、悲しむんだろうか)




