次の行き先
音とほぼ同時に、何かがぶつかったように足元がすくわれた。
足払いを狙ったタイミングでの出来事であったため、バランスを保つこともできず、そのまま地面に倒れる。
「これでおあいこだ。」
そう言われ、胸ぐらを掴まれた。
次の瞬間、地面にぶつかっていた。
「カハッ…!」
掴まれた後に何をされたのか気付くことすらできなかった。
「大丈夫かい。」
男が顔を覗き込むように見下ろしてきた。
すぐさま体を起こし、距離を取る。
「お前、移動系じゃないな。」
先ほどは、男が一瞬で移動していたため、高速移動や瞬間移動系と推測を立てていた優平。
しかし、先ほどは逆に優平が何をされたか認識できず、地面に倒れていたことでもう一つの説が浮かび上がる。
「お前の能力、時間を止める系だろ。」
何が起きたか認識できない。
しかし、次の瞬間には行動が終わっている。
これを説明するには、一番しっくりくる能力である。
「最初見たときから思ったけど、やっぱりお前センスあるよな。」
嬉しそうに笑う男。
「何笑ってんだよ。」
一切気を緩めずに、男に問いかける。
「いやぁ、こんな奴がまだ居るとは思わなかったからよ。ちょっと嬉しいんだ。悪かったな坊主。」
そう言って、ポケットから黒い手袋を取り出し両手に着ける。
「実はな、お前を試していたんだ。」
ぽかんとする優平をしりめに、大きな机に向かう。
「お前にキノウが発現しているか確かめたかったんだ。悪かったな。」
そう伝え、引き出しから何かを取り出した。
「こいつは返してやるよ。」
その手の上には小さくて頑丈そうな小物入れのようなケースが乗っていた。
ケースを男が開けると、優平のものと思わしき金のバッチの姿がそこにはあった。
「てめぇ…ふざけんじゃねぇぞ…」
自分がこの男に試されていたと知り、沸々と怒りが湧いてくる。
「落ち着けって、俺には能力者の把握や能力の使用による犯罪を管理・取り締まる責任があってな。詳しいことはまた今度説明しよう。」
という男の提案だったが、
「今説明しろ。何で試された側がお前に合わせるんだよ。」
強い気迫で男を問い詰める。
「坊主、お前病院から外出許可貰ってここ来てるだろ?時間通りに戻れなきゃまずいだろ。」
意表を突かれ、心臓がキュッとなる。
「何でお前がそれを…」
「そりゃ警察だし。怪しい人物の身辺を調べるなんて当たり前だろ。野上優平君…だっけ。」
ふと時計を見ると時刻は18時52分であった。
余裕があればこの後、家の荷物も持っていく予定のため、決断に悩む優平。
「説明にどのくらいかかるんだ。」
「ん~まあ全部話すとなると1時間くらいかな。お前からの質問に答えなかったらそのくらいだけど、そのうちこっちでも締め作業始まるしなぁ。時間的に厳しいぜ。」
そう伝えられ、男に対して嫌な気持ちを残しつつ、渋々提案を受け入れた優平だった。
「じゃあ最後にお前の能力はなんだったんだ。」
結局分からず仕舞いの能力について聞く。
「俺の能力か。優平お前、いい線言ってたぜ。俺の能力は触れたものを停止させる力だ。」
バッチを受け取りながらその言葉を聞いて、すべてが腑に落ちた。
「なるほどね。理解、理解。じゃあ詳しい話を聞くときは次、いつどこへ行けばいい。」
扉へ向かう前に次の予定を聞く。
「ん~そうだな。ここに来ればまあ確実だが…」
と、歯切れの悪い答えとは違い、男は素早く机の上にあるメモ紙のようなものに何かを書く。
そしてその紙を渡してきた。
「この場所に行くのが一番かもな。俺の…いや、俺たちの師匠だ。」
その紙には一つの住所が記されていた。
「わかった。」
紙を受け取り、部屋の扉を開けようとする時、また一つ質問する。
「あんたの名前、何て言うんだ。」
少し、驚いた顔をしながら、質問に答える。
「時枝 健司。覚えときな。」
ドヤ顔交じりの顔が絶妙にむかつく。
「じゃあな、時枝のおっさん。」
そう言い、入口の扉をパタンと閉めた。




