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平和大船  作者: 藤本レン


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15/22

速い?瞬間?

「お前、使えるんだな。」


男がつぶやき始めた。


「俺の疑問はもう解けた。これ以上やる必要はないが……警察がやられっぱなしじゃ、メンツが立たないよな。」


そう言いながら、ゆっくりと歩いてくる男。


先ほどとは、明らかに雰囲気が違う。


歩く速度は同じか、それ以上にゆっくりだが、油断も隙も見えない。


手袋を外した後、全身から立ち上がる赤色のように見えているオーラがそれを物語っていた。


「手袋外して本気モードかよ。中二病のガキか?おっさん。」


感情を揺さぶり、隙を引き出そうと煽る優平。


「あいにく、心は少年のままなのさ。」


しかし、乱れる素振りが一つもないどころか軽々と受け流されてしまった。


(こんなやばそうなやつに真っ向勝負挑めってか…)


距離が近づくたびに滴り落ちる汗の量が1つ、2つと増えていく。


距離が縮まり、両者の間合いまで後3、4歩といったところで、男も優平に触れようと手を前に出す。


間合いに入る一歩前、先に仕掛けたのは優平だった。


大きく一歩を踏み出し、男の手を引き寄せる。


前のめりに倒れそうな男の腹部へ、肘を入れにかかる。


(入る!!)


この状態なら深く入ると確信する。


「残念。」


次の瞬間、男は背後に立っていた。


急いで後ろへと拳を振る。


「こっちさ。」


またもや攻撃は当たらない。


加えて、今度は優平が攻撃を振った腕の横に立っていた。


この異常事態に今度は優平が距離を取ろうと動いた。


「そんなに焦るなよ。」


しかし、動く先に男は立っていた。


「どんな仕掛けだ?」


「なに、ちょっとした能力さ。お前も持ってんだから分かるだろ?」


赤色に見えていたオーラは幻覚などではなかったようだ。


この男も能力を持っていた。


どのような能力かははっきりとしていないが、優平の認識よりも先に行動が終わる程、速く移動できることは間違いない。


「瞬間移動か、高速移動ってとこか?」


おおよそのあたりをつけ、行動を考える。


(もし仮に瞬間移動か高速移動だったとして、連続で発動できるものなのか?)


瞬間移動であれば、移動後に再びノータイムで、発動というのはなかなか考えられない。


(あるいは一定時間使い放題か、使用回数までは使い放題か…)


男の能力の謎を考えるほどに、様々な可能性が浮上していく。


「やーめた。」


しかし、これ以上考えてもドツボにはまるだけ。


そう考えた優平は、逆に考えないことを選んだ。


「逃げるのかい?」


「ちげーよ。あんたの能力に悩んだせいで頭痛がしてんだわ。」


その言葉に、男はフッと笑ったように見えた。


「じゃあさっさと病院に送り返さなきゃな。」


そう言うと、男は何かをこちらに投げ、向かってきた。


その何かは、優平には当たらず横を通り過ぎていき、後ろに飛んでいく。


何だったのか確認をしようとするが、男はすぐ目の前まで、迫ってきている。


「チッ、やるっきゃねぇか!」


男が拳を握り、優平も構えを取る。


先に仕掛けるのは男。


素早い連続攻撃を繰り出す。


それを後ろに下がりつつ、ギリギリのところで避ける。


「避けてばかりじゃ勝てないぞ。」


男の発言に惑わされることなく、冷静に一発一発を躱していく。


優平自身も反撃をしたいところではあるが、それをする余裕がない。


加えて、男にはまだ効果が不明な能力がある。


(迂闊に踏み込めばやられる可能性がある。)


故に、攻撃をかわし続けるしかない優平であった。


攻撃の手を緩めない男だったが、ジャブのような素早い攻撃中心から、ストレートの大振り中心の攻撃に切り替えてきたようだった。


そこへ、わずかな隙が生まれる。


体を軽く捻り、ストレートを打ったあと、少しだけ重心が傾いている様に見える。


その隙を突き、足払いで体制を崩すことを思いつく。


(今だ!)


左ストレートを躱し、足払いをかけようと足を伸ばす。


パァァン!!


突如、後方からの破裂音と共に、足元がすくわれた。


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