1/22
ここは海上、家は船
海の上に築かれた巨大な船の街。
人々はそこで暮らし、働き、眠り、そしてまた次の日を迎える。
この世界では、それが当たり前だ。
俺もそのうちの一人だった。
「ふわぁ……」
窓から差し込む陽光で目が覚める。
まだ寝ていたくとも、仕事へと赴かなくてはいけない。
簡素な部屋で作業着に着替え、いつもの安い食パンを焼く。
焼き上がりを待つ間、とある部屋に向かう。
家の奥にある和室には、この船の街には似つかわしくない写真が飾られていた。
そこに写っているのは、俺と母の二人だけだ。
「行ってくるね、母さん」
そう言って、金色に輝くバッジを財布に仕舞う。
ジャムを塗った食パンを咥え、家を出る。
スニーカーを履き、
「うっへひはーす(行ってきまーす)」
誰もいない部屋に向かってそう言い、家を出た。




