集合
クラウディアがエドワール王子に手渡していたのは、特殊な魔法加工が施されたブローチ型通信機だった。かつてアーリントン家の錬金術部門で開発され、通常の探知魔術では感知されないよう工夫が凝らされた逸品。
それが今、幼い王子の胸元で静かに光を灯している。
「――準備は整った。王宮の警備に変更はない。けれど、兄上が妙に騒がしくなってきている」
エドワール王子の幼い声が通信機越しに響く。クラウディアたちは侯爵家の作戦室で、緊張の面持ちでそれを聞いた。
「王が自ら兵を率いてアーリントン家を討つつもりらしい」と、ルーファスが低く呟く。「だが、我らに心を寄せる兵も少なくない。動き方次第では、兵力差すら埋められるだろう」
そして、いよいよ決行の時。
セレナが深く呼吸をし、詠唱に入る。彼女の魔法は音を吸い込む。風の流れすら沈黙させるその魔術で、王宮の一角が瞬時に無音の空間へと変わる。
その瞬間、クラウディアはセレナと共に、深い影の中に溶け、すべるように移動する。
目指すは、エドワール王子の部屋――。
王族の警戒は強い。正面からの接触は不可能に近かった。だが、クラウディアの影潜りは壁も床も越える。
そして、まるで現実の揺らぎのように、二人は王子の眼前に姿を現した。
エドワールは驚きもせず、まっすぐ彼女たちを見つめる。
「クラウディア殿、私は信じている。貴女のような方にこの国の未来を託したいと思っている」
その言葉に、クラウディアは静かに頷く。
「ならば共に行きましょう、王子殿下。貴方が選び、貴方が築く未来のために」
こうして三人は、影の中を通って王宮を後にする。アーリントン侯爵家に集結し、ついに決戦の布陣が整う――。




