ヴァル王国の国王は思う
もともと陽気でおおらかな国民性を持つヴァル王国の国王レグナルト三世は、近頃の国内の変化を誰よりも喜んでいた。
街には笑顔が増え、冒険者ギルドと市民が協力して孤児や貧民の保護に動き、教会の支援も重なって、国全体に温かい空気が流れ始めていた。
「本来ならば、こうした取り組みこそが我が王としての務めであったのだがな……」
王は王宮のテラスから市街を眺めながら、静かにそう呟いた。
貧しい者たちが笑い合い、若者たちが真剣に子どもたちを導いている光景。
その中心には、隣国シュタイン王国の王子より不当な国外追放をされるという不遇の身から這い上がったあの娘ーークラウディア・アーリントンと、その仲間たちの存在があった。
「民を思い、力を尽くす者こそが人の上に立つべき姿」
彼女たちに何か礼を、と王は考えた。
だが、下手な勲章や褒賞では、彼らの志に泥を塗ってしまうかもしれない。
ふと、彼は思い出す。クラウディアたちがサマール王国でも活躍したという報告を。
「……そうだ。サマール王国との縁を、彼女たちを介して新たに築くことができれば、互いにとって良き未来となろう」
王はすぐさま、サマール王国の国王へ親書をしたためるよう命じた。
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拝啓、サマール王国の賢明なる王へ。
我が国に訪れた希望の光は、貴国における勇敢な若者たちの活躍と切り離せないものと心得ます。
今こそ、両国の友好を深め、互いの民が共に手を取り歩む時であります。
私たちは、クラウディア・アーリントンとその仲間たちを介し、新たな時代の礎を築くことを願っております。
敬具
ヴァル王国国王レグナルト三世
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そして、その文面をしたためながら、レグナルトは静かに呟いた。
「未来は、彼らの手の中にある。彼女たちが、国を動かし、世界を変える日も遠くはないのだろう」
夜風にのって運ばれる祈りは、遥か遠くのサマール王国の空へと届いていった。




