拠点を廃村へ移す
四人はすぐに行動へと移した。
まず向かったのは、ヴァル王国の西部にある、かつては小規模ではあるが栄えていたが今は廃村となった土地だった。近年は魔物の脅威も落ち着き、王都と周辺都市を結ぶ街道の中継地としても注目されつつある。復興させるには絶好の場所だった。
アーリントン侯爵家――他国・シュタイン王国に籍を置くにもかかわらず、クラウディアの父レオンハルトは娘の願いを快く受け入れた。
「娘の志に異を唱える道理はない。必要な資金も、職人も手配しよう」
母・セリーヌもまた支援を惜しまなかった。
彼女は若い女性たちの教育支援に目を向け、侯爵家の名義で寄付金を募り、国内外の協力を仰ぐよう手配を整えた。
拠点の建築が始まると、クラウディアは積極的に現地へ足を運んだ。
保護された人々一人ひとりと話をし、その希望に耳を傾ける。農業を学びたい者には畑を、縫製に興味がある者には織物の工房を。魔術に惹かれる少女には、フィンが選んだ基礎魔法の教本を手渡した。
「ここは“避難所”ではありません。あなたたちが自分の足で歩き出すための――出発点です」
静かに告げるその声に、涙を流す者は少なくなかった。
村には新たに「エソール」と名がつけられた。
古語で“飛躍”や“発展”を意味するその言葉には、「過去がどうあれ、未来を創る場所にしたい」という彼女たちの想いが込められている。
クラウディアは、風に揺れる建築中の屋根を見上げながら、ぽつりと口にした。
「この世界が少しでも良い方へと変わって欲しい…。」
誰かを救うというのはその場限りのことではない。その後の未来も一緒に救わねば別の悲劇に巻き込まれるだけだ。
未来をつくること――その第一歩が、確かにここに刻まれ始めていた。




