人身売買組織をたおそう
ギルドに舞い込んだ一件の依頼。
それは、最近王都周辺で急増している「若い女性や貧しい子供を中心とした失踪事件」に関する情報提供と、その元凶となる組織の壊滅を求めるものだった。
表向きは“蒸発”として処理されているが、裏で人身売買が横行している――そんな噂が流れて久しい。
しかし証拠も、組織の拠点も、決定的なものは掴めていない。
ギルドはこの依頼を「危険度A」に指定し、有志の冒険者に調査を依頼したが、そのまま戻らない冒険者もいた。
「気が進まないなら、無理にとは言いませんが…。でも、あなたたちなら突破口を開けるかもしれないと思って…」
そう言ってミシャが手渡した書類を前に、クラウディアは静かに頷いた。
「被害者がいて、私たちで救える可能性があるのならやりましょう。」
クラウディアたちは独自に聞き込みを行い、闇市で交わされていた裏の“奴隷リスト”の情報から、ある廃棄された地区…スラム街のような場所へと辿り着く。
ーーー
夜。王都の裏側で、月のあかりすら届かぬ細い路地に、彼らは姿を現した。
「この先、結界の気配がある……簡単には近づけそうにないね」
セレナが呟くと、アレクが持ち込んだ地図に目を落とした。
「裏口が二つ。東側の排水路と、北側の屋根経路。どっちも人が見張ってるっぽい」
「正面突破は避けましょう。音を断てれば、近づけるはず」
クラウディアが言い、セレナが小さく頷いた。
「消えろ」
彼女が指先を鳴らすと、あたりの空間が歪むように、音の気配が失われた。
風の音も、遠くの喧騒も、沈黙に溶ける。
そして次の瞬間――
「眠れ」
小さな響きが広がり、門番たちの目が虚ろになった。
一人、また一人と崩れ落ちる。静かに、夢へ堕ちるように。
「今です」
クラウディアとフィンの2人はそれぞれセレナとアレクを連れて影潜りをして姿を消す。
門の裏手まで達すると、ひと息で姿を戻し、静かに鍵を開いた。
「侵入完了。フィン、先導お願い」
「お任せを」
フィンは二刀を抜き、音もなく先陣を切る。
まるで闇そのもののように、素早く、確実に敵を無力化していく。
薄暗い廊下、地下へと続く階段を降りた先に、“檻”があった。
そこには、やせ細った少女たちが閉じ込められ、泣き声すら漏れないほど衰弱していた。
「間違いない。ここがアジトだ」
だがその時――
「侵入者か!」
怒号とともに、装備した男たちが押し寄せる。
「来るぞ!」
アレクが叫び、セレナが即座に広域の音結界を展開する。
クラウディアは影を広げ、敵の動線を遮断するように床を闇で塗り潰す。
「影縛り」
足元から伸びる影が、敵兵の動きを封じる。
フィンがその隙を逃さず斬り込む。二閃、三閃――沈黙の中、戦闘が進んでいく。
最後の敵が倒れ、全てが静寂に包まれたとき、クラウディアは少女たちに膝をつき、優しく囁いた。
「もう大丈夫。すぐに助けを呼ぶから」
泣き崩れる少女たちの背を、セレナがそっと撫でる。
その夜、王都の闇にひそんでいたひとつの“影”は、音もなく消えた。
依頼は「達成」と記録され、クラウディアたちの名は王都のギルドにも刻まれる。
密かに4人は英雄と呼ばれはじめていた。




