意外な遭遇
クラウディアたちはギルドの依頼で、ある村の魔獣被害を調査・鎮圧するために訪れていた。依頼そのものは順調に片付き、村の人々から感謝されつつ帰路につく準備をしていたところ…
「……あれ?」
クラウディアは、村外れの薬草畑で何かを摘んでいる女性の姿に目をとめた。
柔らかな銀色の髪。淡い服に、清潔な手袋。
だが、背筋の伸びた立ち姿と、ふとした仕草に、かすかな既視感がある。
「お嬢様どうされました?」
同行していたフィンが不思議そうに尋ねる。
「……あの人、見覚えがある」
気になって近づいたクラウディアは、女性が振り返った瞬間、確信した。
クラウディアが歩み寄ると、女性……レイラは一瞬だけ目を見開き、そしてすぐに静かに笑った。
「……まさか、こんなにすぐ気づかれるとは思わなかったわ」
「やっぱり、あのとき影の中で目が合った。……あなた、なぜあんなところに?」
クラウディアの問いに、レイラは一瞬だけ視線を伏せた。そして摘んだ薬草の籠をそっと地面に置き、まるで長年の重荷を下ろすように息をついた。
「私は、レイラ=ヴァレンタイン。公式には死んだことになっているヴァレンタイン伯爵家の娘。…見ての通り私は生きてる。そして生き延びた理由は、たった一つ」
彼女の目が鋭くなった。
「両親を殺した、あの結社の連中に復讐することよ」
風が草を揺らし、クラウディアの髪がなびく。
フィンとアレクが警戒の色を見せる中、セレナは静かに見守っている。
「あなたにとっては関係のないことかもしれない。でも、私にはもう人生の目的なんて、それしか残っていないの」
クラウディアはその言葉に、どこかかつての自分を重ねていた。
レイラは続けた。
「あなたはきっと、もっと大きなものを背負っている。私はその一部にすぎない。でもね……あなたの行く先に、きっと私の目的の“本丸”もあると思うの」
「……どういうこと?」
「あなたのこと、見てた。研究員のふりをして、あの地下の結社に潜り込んでいたの。でも私は、もう限界。私の力だけでは届かない。だから、交渉しに来たの」
レイラは真っ直ぐにクラウディアを見る。
「利用して。私の情報、私の存在、私の復讐心――何でもいい。あなたにとって役立つのなら、私はそれでいい」
「その代わり、たった一つ」
「両親を殺したあの男を……《ヘルベルト・ロッシュ》を、この手で裁かせて」
その声音に、哀しみも、嘆きも、すでにない。ただ、揺るがぬ静かな覚悟だけがあった。
クラウディアはしばらく黙っていたが、やがて静かに頷いた。
「……考えさせて。私は人を利用するのが得意じゃないの。でも、あなたがそう望むのなら、選択肢には入れておく」
レイラは、ほっとしたような、けれどどこか寂しげな笑みを浮かべた。




