目が覚める。
召喚獣が消え去り、霧が完全に晴れたあと——
クラウディアは、静かにその場に崩れ落ちた。
急激な覚醒と全力の魔力行使。残された体内魔力は一滴もなかった。
「お嬢様!!!」
駆け寄ったフィンがその身体を抱きとめた瞬間、彼女の意識は闇の中へと沈んでいた。
「……気絶しています。命に別状はありませんが、しばらくは動けません」
フィンが静かに言うと、アレクとセレナは顔を見合わせて頷いた。
「じゃあ、あとは俺たちがこの人たちを……!」
「ええ、急ぎましょう」
助け出された人々を安全な場所へと誘導する二人の後ろで、フィンはクラウディアをしっかりと抱きしめたまま、そっとその髪を撫でた。
「……本当に、よくご無事で」
ーーーーーー
数日後。
ヴァル王国の宿の一室。
クラウディアがゆっくりと目を開けると、まず目に飛び込んできたのは、柔らかい天蓋と、カーテン越しの穏やかな光だった。
そして……自分の枕元に座るフィンと、並んで寄り添うように椅子に腰掛けるアレクとセレナの姿があった。
「……あら」
その声に、三人の視線が一斉に彼女へ向けられた。
「クラウディアさん!」
「……目が覚めて、よかった」
「お嬢様!!」
ほっと安堵の色を浮かべ、皆が微笑む。その温かな空気に、クラウディアも小さく息をついた。
「ごめんなさい。心配かけたみたいね」
「いえ……とにかく、ご無事で何よりです」
フィンが穏やかに頭を下げた後、真っすぐにクラウディアを見つめた。
「お嬢様……覚醒…されたのですね」
クラウディアは、少しだけ考えるように目を伏せ、それからゆっくりと笑った。
「……ええ。あの瞬間、自分が何をすべきか、何ができるのかがはっきりわかったわ。……どうやら、これが覚醒みたい」
その言葉に、フィンも静かに微笑んだ。アレクとセレナも、尊敬と安堵が入り混じったまなざしを向けてくる。
「さて、とりあえずお父様に報告しなくてはね」
クラウディアが上体を起こしかけながら言うと、フィンは苦笑した。
「ご安心ください。すでにご報告は済ませてあります」
「……え?」
「侯爵閣下はすでにこちらに向かっておられます。あと半日もしないうちに到着されるかと」
「……早っ」
クラウディアは唖然とし、それから頬に手を当てて小さくため息をついた。
「……お父様、少し過保護じゃありません?」
フィンは肩をすくめながらも、どこか嬉しそうに微笑む。
「娘を想う親心です」
クラウディアは微笑み返し、ようやく完全に身体を起こすと、三人を見渡した。
「……ありがとう。あなたたちがいてくれて、私は幸運だったわ」
その言葉に、アレクとセレナは照れたように顔を見合わせ、フィンは静かに頭を下げた。
小さな部屋に、穏やかで確かな絆が漂っていた。




