失踪事件
ーー 最近ヴァル王国の首都近郊では、人々の失踪事件が相次いでいた。
目撃情報は一切なく、争った形跡もない。ただ忽然と、人が消える。
王都の騎士団が調査に乗り出したが、そのうちの数名までもが同様に消息を絶った。
……これはただの人攫いではない。
王都ギルドから「調査・解決」の依頼が掲示されるや否や、クラウディアたちは即座にそれを受けた。
「影魔法の気配がいたします」
フィンがクラウディアの耳元でそっと囁く。
「……私も、そう思ってた」
クラウディアは小さく頷く。闇魔法使いの直感。嫌な気配が、地面の下、建物の隙間、街の影の奥でざわついているのがわかる。
セレナ、アレクも加わり、4人は調査を開始した。
現場には何の痕跡もない。だが、空気は妙に重く、張り詰めていた。
「ねえ、なんか……ここ……」
セレナがそう言いかけた瞬間だった。
ぬるり。
彼女の足元の影が、まるで液体のようにうごめき、彼女の足をつかんだ。
「――っ!? なにこれ、やだ、離して!!」
「セレナ!!」
アレクが駆け寄る。だが影はどんどん彼女を地面へと引きずり込もうとする。
次の瞬間、クラウディアの指が鋭くひかり、影に向けて冷気を叩き込んだ。
ヒュッ……ザラッ……!
影が震え、セレナは地面に放り出されるように解放された。
「ふぅ……助かったぁ……」
「無理に動かないで」クラウディアはセレナの肩に手を置いた。
そして、自らの足元に現れた影へと、静かに手を伸ばす。
「……場所を、見せて。」
クラウディアの影魔法が起動する。
…影潜り――彼女は静かに、地面に広がる影の中へと姿を沈めた。
ーーー
再び姿を現したクラウディアの額にはうっすらと汗がにじんでいた。
「アジトがあるわ。古い水路の奥……そこに彼らが集まってる。
黒衣の男たちが……古代呪術のようなものを唱えていたわ。」
「それって、秘密結社……的な何か?」セレナが青ざめながら聞く。
「たぶんかなり本気のやつだ」アレクが剣を握り直す。
「行こう」クラウディアは静かに言った。
ーーーー
地下水路の最奥、崩れかけた聖堂跡のような空間。そこに集まっていたのは黒衣を纏った異様な存在たちだった。
「ヴァルの血脈に、影の刻印を刻め……」
男たちは円陣を組み、古代文字が記された石盤を囲んでいた。
「貴様らか……我らの”儀式”を嗅ぎまわっていたのは」
影の中から声が響く。
クラウディアたちが姿を現すと同時に、十数の影がうねりながら立ち上がる。
「行くぞ!」
フィンの剣が跳ね返す。
「こっちも準備はできてる!」
アレクとセレナが続いた。
その時、石盤が突然、轟音とともに割れた。
吹き出す影。膨れ上がる呪力。地面が震え、闇の魔物が姿をあらわそうとする。
クラウディアの瞳が光を宿す。
「簡単には、終わらせてくれないみたいね」




