サマール国王と王妃
宴も佳境に入り、楽団の奏でる音楽が一段と華やかになる頃、侍女がクラウディアたちのもとへと歩み寄った。
「アーリントン嬢、フィン殿、セレナ嬢、アレク殿。国王陛下と王妃陛下が、皆様にお話があるとのことです。恐れ入りますが、こちらへ」
クラウディアは一礼し、他の三人もそれに倣って立ち上がる。彼らは案内に従って、賓客用の控え室へと向かった。
金と白を基調にした上品な部屋には、すでにサマール王国の国王と王妃が揃っていた。
「ようこそおいでくださった。まずは……この国を救ってくれた皆に、あらためて礼を言いたい」
柔らかくも威厳ある声音で、国王はそう語る。隣に座る王妃も、穏やかに微笑んだ。
「……クラウディア嬢。そなたの姓を聞いて、ふと記憶が蘇ったのだ。シュタイン王国のアーリントン侯爵――レオンハルト殿とは、若かりし頃に剣を交えたことがある」
クラウディアは驚きに目を見開く。
「父上と……?」
「そうだ。あの男はまこと強かった。そして誇り高く、誠実な人物だった。まさかその娘君と、こうして出会うとはな」
王はしみじみと語り、続けて表情を少し引き締めた。
「……実はな、シュタイン王国でそなたが理不尽な扱いを受けたという話も、密かに耳にしておる」
クラウディアの背筋がわずかに強張った。
「……難儀だったな。だが、そなたの強さと誠実さは、ここサマールにしっかりと届いている。もし今後、困るようなことがあれば……遠慮なく我らを頼るとよい」
「……畏れ多いお言葉、深く感謝いたします」
クラウディアは丁寧に頭を下げたが、その瞳には確かな光があった。
王妃が柔らかく微笑みながら言った。
「クラウディア嬢が、こうしてサマールに来てくれたこと、そして……心からの笑顔を見せてくれたこと。それこそが、何よりの礼ですわ」
クラウディアは驚いたように一瞬瞬き、そして――わずかに、しかし確かに微笑んだ。
控え室の空気が、温かく満ちていく。
王と王妃は、それぞれ立ち上がり、クラウディアたちに軽く頭を下げた。
「サマールは、そなたたちの帰る場所の一つだ。どうか、それを忘れぬように」




