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追放令嬢は闇魔法で無双する。  作者: ちょこだいふく


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27/70

サマール王国の王宮へ

その日、夕暮れとともに、馬車の車輪が石畳を静かに叩く音が響いた。


 王宮へと向かうための、最後の支度を終えたクラウディアが姿を現すと、アレクとセレナは言葉を失って硬直した。


 漆黒のドレスは月明かりのような銀糸で縁取られ、彼女の長い黒髪をより艶やかに映し出す。深紅の宝石が胸元にひとつだけ灯りのように輝き、闇に咲く一輪の花のような美しさを際立たせていた。


「…本当に人間?」

 最初に声を漏らしたのはアレクだった。思わずぽかんと口を開けたまま動かない彼の肩を、隣のセレナが小突く。


「アンタ、その言い方は失礼よ。でも……ほんと、人間とは思えないほど綺麗…まるで天使か妖精のようだわ……」


 セレナの格好は金糸の刺繍が施された深緑のドレスに、彼女の髪はクラウディアの手で美しく結い上げられている。アレクもまた、格式高い礼装に身を包み、少年らしい面影を残しつつも、どこか誇らしげな雰囲気をまとっていた。


「ふふっ」

 クラウディアが笑みをこぼすと、隣のフィンも微笑みを浮かべる。珍しく、彼の瞳にも柔らかな色が宿っていた。


「ふたりとも、堂々としていてよ。今のあなたたちは、どこから見ても立派な冒険者であり、この国の誇るべき英雄よ」


「……英雄、か……」

 アレクが照れ臭そうに鼻をかいた。「全然実感わかねぇな……なんか、まだ信じられないや」


「私だって同じ。鏡を見ても、これが私だなんて……」

 セレナも頬を染めながら視線を落とす。


「大丈夫。とっても似合ってるわ。」

 クラウディアの言葉は、飾り気のない真心で彩られていた。


 やがて、王宮の正門が見えてくる。見上げるほどに高い白壁、その先にそびえる金色の塔。門前には整然と並ぶ騎士たちと、豪奢な飾りをつけた従者たちの姿。


 馬車が静かに止まり、扉が開く。


 クラウディアが一歩踏み出すと、光が彼女を包むように舞った。


「……まるで、夜空に咲いた星みたいだ」

 思わず、アレクが呟いた。


 フィンが無言で、だが誇らしげにクラウディアの後ろに立ち、二人を軽くうながす。アレクとセレナがそれに続く。


 宴の前、玉座の間にはすでに貴族や要人たちが集い、王の到着を待っていた。


 そして、その空気を切り裂くように響いたのは、王の威厳ある声だった。


「冒険者クラウディア・アーリントン。そしてその仲間たちよ――」


 王の姿が玉座から立ち上がり、ゆっくりと彼らの前へと進み出る。周囲が静まり返る中、王の口元に笑みが浮かんだ。


「サマール王国を救ってくれたその勇気に、心より感謝を述べよう。貴殿らの行いは、ヴァル王国の誇りであろう」


 厳かな沈黙の中で、セレナとアレクの肩がぴんと張る。


 その横顔を、クラウディアはそっと見つめた。


 彼女の表情には――ほのかな誇りと、あたたかい光が宿っていた。

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