喜びと報告
サマール王国のギルドにて、クラウディアたちが帰還したという報せはすぐに広まり、冒険者や関係者たちが次々と駆けつけた。
意識不明だった者たちが目を覚まし、高熱でうなされていた者たちが急速に快方へ向かっているという報告が次々と舞い込んでいた。
「本当に、君たちが……あの異変を止めたのか?」
ギルドマスターが信じられないといった顔で問いかける。
クラウディアは頷き、封印の魔法陣とそこにあった白い天使像のことを簡潔に語った。
闇魔法を使って魔力の流れを整えたこと――それが今回の異変を終わらせた決定打だったと。
話を聞いた者たちはしばし沈黙し、やがて歓声が上がった。
「よくやった!!ありがとう!!」
「サマール王国を救った英雄だ!」
「乾杯だ、乾杯の準備を!」
沸き立つギルドの空気を背に、クラウディアは静かに頭を下げた。
そしてその報告をフィンから聞いたレオンハルトはフィンに、馬鹿王子が勝手に言った国外追放なんぞとっくになくなっているのだし、一度帰ってくるようにと伝える。そしてその際は同行のものも連れてくるように伝えた。
急ぎサマール王国から
クラウディア、フィン、アレク、セレナの四人は、王都にあるアーリントン侯爵家へと向かう。
父・レオンハルトが帰還した娘の報告を受ける場である。
応接間には深紅の絨毯と漆黒の調度が並び、いかにも軍人貴族の家らしい重厚な空気が満ちていた。
レオンハルトは一歩前に出て、娘とその仲間たちをじっと見つめた。
その鋭い眼光に、セレナとアレクが少し身を固くする。
「長旅ご苦労だったな。すまない、久方ぶりに娘と会えて少し緊張してしまっているようだ。楽にしてくれ」
「お父様…サマール王国での異変、無事解決して戻りました。報告させていただきます」
クラウディアの言葉に、レオンハルトは頷いた。
「よく戻った。まずは無事を喜ぼう」
声は低く、だが明らかに安堵が滲んでいた。
クラウディアは、封印の魔法陣と白い天使像について、闇魔法によって流れを整えたこと、その結果として異変が収まったことを、落ち着いた口調で報告していった。
レオンハルトは最後まで黙って話を聞き、すべてを聞き終えると――
「……まさか、闇魔法が封印を整えるなどとはな。普通なら暴走させるはずだ」
「お嬢様だからこそ…だったのかもしれません」
フィンが小さく言うと、レオンハルトは頷く。
「フィンよ、護衛としてよく働いてくれた。お前がいるので心配はいらないのだが、それでもやはり実際にクラウディアの顔を見ると安心する。礼を言うぞ」
「もったいないお言葉です、侯爵閣下」
そしてレオンハルトはアレクとセレナにも視線を向ける。
「君たちも、我が娘の力になってくれた。……アーリントンの名にかけて感謝しよう」
二人は一瞬目を見合わせ、そして深く礼をした。
「助けてもらったのは、むしろ僕らの方です」
「クラウディアさんがいなかったら、きっと……」
レオンハルトは娘の方に視線を戻した。
静かな時間の中、重く温かな空気感だった。
「クラウディア、お前はもう“ただの侯爵令嬢”ではない。自らの足で進み、困難を越え、誰かを救った。…誇りに思う」
クラウディアは一瞬だけ目を伏せ、そして真っすぐ顔を上げた。
「ありがとうございます、お父様。でも、私はまだ、これからです」
「その意気だ」
二人の間に、ゆるやかな敬意と深い信頼が流れていた。




