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追放令嬢は闇魔法で無双する。  作者: ちょこだいふく


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原因究明

村に滞在して三日目、クラウディアたちは異常気象と水脈の汚染について地元の長老から詳しく話を聞いた。その昔、この地には神の祝福を受けたというオアシスがあり、人々はそれを「月の涙」と呼び、敬っていた。しかし十数年前から徐々に水量が減り、ここ数年で水はすっかり濁り、家畜すら近づかなくなったという。


「最近じゃ、夜になると何かが水辺から這い出してくるって噂もあるんだ。影のようなものが…。」


長老の声は震えていたが、虚言には思えなかった。


クラウディア、セレナ、アレク、そしてフィンの四人は、話を聞き終えるとすぐに水源の調査に向かった。かつて豊かだったというオアシスは、今や枯れかけた沼のような有様だった。だが、水位が下がったことで新たに露わになったものがあった。


「……あれ、洞窟?」

セレナが指さした先、水辺の崖下に、自然にしては不自然な亀裂が口を開けていた。


クラウディアは地面に膝をつき、水面に手をかざす。ぬるりとした不快な気配。魔力の流れが乱れている。


「この下、水脈が繋がってる。だけど……何かが詰まってるみたい。しかも、毒の気配がする」


その言葉に、アレクの表情がこわばった。「毒……って、誰かの仕業か?それとも…魔物とか…?」


「…これは自然発生的なものじゃないわ。人工的に、あるいは魔法的に汚染されたものよ」

クラウディアは静かに呟いた。「闇系魔法で抽出すれば、成分が分析できるはず」


洞窟の入り口は狭く、四人は灯りを持って中へと入っていく。苔むした壁、岩肌には古い装飾が彫り込まれていた。


「これ、文字じゃない?」

セレナが灯りを翳すと、淡く光を反射して浮かび上がった文様が見えた。それは、シュタイン王国でも一部の文献でしか見かけない、古代の封印術に関連するものだった。


奥へ進むほどに、空気は重く、ぬめるような瘴気が漂ってきた。突然、アレクが足を止めた。


「……ッ!」

彼の肩に触れた黒い影のようなものが、一瞬で身体にまとわりついた。


「アレク!」

フィンが駆け寄るが、彼はその場で崩れ落ち、高熱を発しながら意識を失った。


「影の瘴気……まさか、これが原因?」

セレナは震え声で問いかける。


だが、クラウディアの瞳は冷静に、洞窟の奥を見つめていた。空間の奥に、結界の痕跡と、光の魔力が暴走したような残響がある。


「これは……光魔法の暴走痕。誰かが、ここで光属性の高位魔法を使った……。でも制御に失敗したのね」


闇の中に光が満ちすぎれば、バランスが崩れ、世界の“影”が出られなくなる。その反動が、影の瘴気を生み、空間の魔力を狂わせていたのだ。


「つまり、影の瘴気は“闇”のせいじゃなくて、“光”が暴れたせいってこと……?」

セレナが呆然と呟く。


クラウディアは頷いた。「光と闇は表裏一体。どちらかが強すぎれば、もう片方は歪む。ここでは、光が“封じる”ために過剰に使われ、その結果、影が出口を失い、瘴気となって水脈に漏れ出した」


彼女はゆっくりと杖を構えた。「闇系魔法なら、毒と瘴気を吸収・抽出できる。中和はできないけど、原因を突き止めて、封印のやり直しなら……できるかもしれない」


アレクの額に手を当て、クラウディアは小さく闇の魔法を唱える。彼の体内に染み込んだ瘴気が、黒い霧となって手のひらに収束されていく。やがてアレクは浅く息を吐き、昏睡状態に落ち着いた。


「……クラウディア…そんなことまで出来ちゃうの…?」

セレナが、半ば呆れたように呟く。


「ええ、闇を知る者として、光のことも知っておきたかったから」


クラウディアはそう言って、奥へと進んだ。


石造りの祭壇の中央に、淡く輝く封印の魔法陣が広がっていた。複雑に交差する光の線は、見る者の目を惑わせるように宙に浮き上がり、触れることすら躊躇われるほど神聖な雰囲気をまとっていた。


クラウディアはゆっくりとその中心に近づいた。

そこにいたのは


天使像だった。


白い石で彫られた、美しい翼を持つ存在。

けれどその顔には苦悶の影が刻まれていた。目を閉じ、祈るような仕草で眠っている。だがその姿にはどこか異様だった。ただ眠っているのではなく、封じられている、そう直感で理解できた。


クラウディアはそっと手を翳す。

封印の魔法陣から微かに脈打つ魔力を感じとる。だがその流れは不自然に捻れていた。光の魔法で構成された封印陣は、過剰なまでに「聖」の力を注ぎ続けている。それが周囲の影を乱し、空間そのものに歪みを生じさせていたのだ。


「……これが原因だったのね」


囁くように呟いたクラウディアは、己の魔力を指先に集めた。

闇の波動が、魔法陣の輝きに溶けるように触れていく。


光と闇が交錯する。

だが対立ではなかった。

クラウディアの魔力は、あくまで「整える」ために注がれていた。過剰な光を鎮め、暴走する結界を安定させるための穏やかな流れ。


やがて、魔法陣の光が穏やかに収束しはじめた。

天使像の顔からは苦悶の表情が消え、まるで本当に安らかな眠りについているような静けさが戻ってくる。


空間を満たしていた瘴気のようなものも、次第に晴れていった。


「…これで、元に戻るわ」


クラウディアが呟くと、周囲にいた村人たちや騎士団員たちが息を呑んで見守っていたことに気づいた。

誰もが言葉を失い、ただ彼女の手の中で起きた“調和”を見ていたのだ。


「……闇の魔法で…光が落ち着いて…結果闇の暴走も治った…??意味がわからない…」


誰かがぽつりと呟く。

その言葉に、少しだけクラウディアは微笑んだ。

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