旅立ちの日
クラウディアの話は即座に両親、そして2人の兄にも共有された。
帰宅したアーリントン侯爵家の広間は、いつになく緊迫した空気に包まれていた。
父レオンハルト侯爵は、顔を真っ赤にして怒りをあらわにしていた。
母セリーヌ夫人は、静かな怒りを胸に秘め、けれどその美しさは変わらず輝いていた。
「クラウディア、可愛い我が子よ。あのような理不尽な断罪を受け辱められただけではなく、王都から即時追放など……到底理解できぬ。このまま我々も黙ってはいられぬ」
父は今から公爵家の兵を集めて城を攻め落とす勢いで怒っている。
「私は……私の娘がそんな侮辱を受けるなんて絶対に許さない!」
母も厳しく言い放つ。
「外遊中の王妃に連絡を取ります!こんな横暴が許されていいはずがないわ。」
クラウディアは静かに二人の言葉を聞きながら、決意を固めていた。
「父上、母上。私ももう、ここにとどまるつもりはありません。良い機会ですし、私の人生は私が選びます。」
長兄シリルが重々しく口を開く。
「クラウディア、我々はおまえを全力で支える。王都での汚名など気にせず、好きに生きてみろ!」
次兄ルーファスも陽気に笑って言った。
「ねえ、クラウディア。僕にできることは何かあるかい?可愛い妹のためなら何だってやるよ!」
家族の温かい支えを背に、クラウディアは深く頷いた。
「ありがとう。」
家族は旅立ちに必要なものや、連絡を取るための魔導具などを総出で用意した。
侍女と護衛を連れて行くよう勧められたが、クラウディアはそれを断り、明日の朝一番に出発すると告げて自室に戻った。
夜も更け、みなが寝静まった頃、クラウディアはそっと家を出た。
まだ薄暗い空の下、彼女の心には新たな旅立ちの予感が満ちていた。