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追放令嬢は闇魔法で無双する。  作者: ちょこだいふく


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19/70

解読しよう!

宿の一室。

蝋燭の灯りが、壁にゆらゆらと影を揺らしていた。窓の外では夜風が木の葉を揺らし、かすかな木々のざわめきが耳をくすぐる。そんな穏やかな静けさのなかで、クラウディアは机の上にそっと一冊の本を置いた。


遺跡から持ち帰ったそれは、漆黒の表紙に銀の文字が浮かび上がるように刻まれている。

中央には、翼のような模様…羽ばたく瞬間を切り取ったかのような美しいデザインが施されていた。


「……翼、がキーワードなのかしら?」


呟いたクラウディアは、そのままゆっくりと本を開いた。

中には、まるで模様のような独特な文字がずらりと並んでいる。幾何学的な形に見えるそれは、単語の区切りすら曖昧で、一見すると装飾のようにも見えた。


「読めますか?」


フィンが静かに隣に立ち、問いかける。クラウディアは少しだけ眉をひそめたものの、すぐにうなずいた。


「少しだけ。……前世で見たラテン語や古英語に似てる気がするわ。文法の骨組みが共通してる感じ。でも、細かい語彙は未知ね。フィンは?」


「……読むことは、できると思います。……ひとまずこのあたりから読み上げましょうか?」


「ええ、お願い」


フィンは本の左ページを指で押さえると、淡々と、しかしどこか慎重に言葉を紡ぎ始めた。

低く、抑揚を抑えたその声が部屋の空気に溶けていく。


「ーー“影より生まれしもの、全ての色を統べる者なり”……」


クラウディアの指が止まり、目が細められる。


「待って、それもう一度……」


「“影より生まれしもの、全ての色を統べる者なり”」


「……やっぱり。全ての色を混ぜたら黒になる。闇はその象徴ってことね」


彼女はノートにその言葉を書き写しながら、さらに数ページをめくる。

フィンがまた別の一節を読み上げる。


「“黒は終わりにして始まり。光を取り込み、そして解き放つ”」


「……ふふ、詩的ね」


クラウディアは目を伏せ、そして息を整えながら、本の情報をひとつずつまとめていく。

分かってきたのは、次のようなことだった…。



ーーー解読された情報


■ 闇魔法の成り立ち

闇魔法は、古代文明において最も高位の魔法とされていた。

それは単なる破壊や支配ではなく、“すべてを包み込む”という性質を持つ。光さえも吸収し、内に秘める力。


■ 闇魔法使いの迫害の歴史

しかしその力ゆえに、他の魔法使いたちから恐れられ、やがて王族や神官たちによって“封じるべき魔法”として禁忌とされた。

闇の魔法使いたちは次第に歴史から姿を消していき、真実は忘れ去られていった。


■ 闇魔法の実践と応用

・影の中に自分の姿を隠し移動する「影潜り」

・他の属性魔法を取り込み、再構築して放つ「収束」

・一度見た魔法を無効化し、模倣する「写魔」

ーーなど、応用範囲は非常に広く、他の属性と組み合わせることで驚異的な能力を発揮する。


■ 覚醒の兆候と方法

闇魔法の使い手が、その力を極限まで高めると、肩甲骨の奥に“鍵”が芽生える。

この鍵は“記憶と感情”に強く呼応し、真に自らを知ったときそれは翼のようなエネルギー体として発現する。

覚醒した者は、すべての属性魔法に通じるとされる。


■ 封印の理由とこの本の存在意義

この本は、未来の“覚醒者”が現れることを想定して記された。

“この書を読める者こそ、真に翼を持つ者なり”と、巻末に記された古い言葉が、静かにその重みを伝えていた。



ーー


ページを読み進めながら、クラウディアはふと、背中……肩甲骨の奥に、微かな熱を感じた。

目には見えないそれは、まるでずっと前からそこにあったものが、今ようやく息をし始めたかのよう。


「……目覚めはじめたのね」


ぼそりと呟いた声は、自分自身への独り言のようでもあり、隣に立つフィンへの静かな報告のようでもあった。


フィンは何も言わず、ただその視線だけを、まっすぐ彼女の背中に向けた。

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