心を開いてみる。
木漏れ日亭の片隅、四人が囲むテーブルには、簡素ながら温かい夕食が並んでいた。田舎町の宿とは思えぬほど丁寧な味に、全員の表情がほころんでいる。
「……うまっ。やっぱここのスープ好きだなあ」
アレクがスプーンを置き、ほっと息をつく。
「クラウディアさんたち、どこから来たの?」
セレナが水を口に含んだあと、気さくに尋ねた。
クラウディアは一瞬だけ眉を動かしたが、躊躇いはしなかった。
「――首都よ。……婚約者に冤罪をかけられて、国外追放されてしまったの。だから、冒険者をしているわ」
アレクとセレナが、あっけにとられたように目を見開く。フィンをちらりと見やると、彼は静かに頷いた。
「フィンは私の護衛。……フィンについては、私もよく知らないのよね。フィン、あなたのほうから何か言えることある?今日知り合ったばかりではあるけど、この2人にはあまり隠さなくても良いような気がしてきたの。」
唐突な話題の振りに、フィンは少しだけ目を瞬いた。だが、すぐに口を開く。
「…お嬢様がそう思われるなら私もそういたしましょう。私は、長年クラウディアお嬢様の父上――アーリントン侯爵に仕える護衛です」
その一言に、再びアレクとセレナが固まった。
「……え、えっ? アーリントン侯爵って、あの……隣の王国の東軍を率いたっていう有名な?」
「すごい、っていうか……えっ、じゃあクラウディアさんって、本当に…え、この喋り方とか不敬??どうしよう!」
「そういうのはもう関係ないわ。今は、ただの冒険者。だから喋り方なんて気にしないで。」
クラウディアは水をひと口飲み、静かに告げた。
「……俺ら、すごい人に命助けられたっぽい?」
アレクがぽつりと呟くと、セレナがひじで突いた。
「だからって、私たちが態度を変えるのは寂しいわ。せっかく言ってくれてるんだし今まで通りでいいじゃない」
「……そうだな」
アレクは頷き、ちょっと照れくさそうに笑った。
「私たちは、ヴァル王国でも田舎のほうの村の出身なの。アレクとは小さい頃からの幼馴染。牛や羊の世話を手伝いながら、当たり前のように一緒に冒険者になって……こんな風に旅をしてるわけ」
セレナが柔らかく笑うと、クラウディアもわずかに口元を緩めた。
こうして、不思議な縁で繋がった四人の距離は、静かに、けれど確実に縮まり始めていた。




