報告
ギルドに戻った四人は、報告を終えると同時に――
「アレク! セレナ! また無茶して!!」
受付のミシャに思い切り怒鳴られた。
アレクは頭をかきながら「いやぁ……その、すみません」と苦笑いし、
セレナは「だから言ったのに」と、私は言いましたよ、と言わんばかりの態度。
その様子を見ていたクラウディアとフィンは、目を合わせて小さく笑った。
「まったく……懲りてないわね、あの二人」
「……まあ、無事ならいい」
ふと、酒場の奥からじっとりとした視線を感じた。
「おい……あんたが、あの“影狼”を討ったって女か?」
酔った冒険者の男が、ふらふらと歩み寄ってくる。明らかに機嫌が悪く、手にはまだ酒瓶を握っている。
「たまたま女だったってだけで噂になってんのか? 笑わせんなよ…どうせその影狼は死にかけてたんだろ…」
クラウディアが何かを返すより早く、フィンが一歩、前に出た。
その目が、鋭く、冷たく、まるで凍てつく刃のように男を貫く。
キンッと場の空気が凍りついた。
目線ひとつで、命を絶たれるのではと思わせるような――あまりにも純粋な、殺意。
「……っ!」
男が息を呑むのがわかった。目を逸らすように、一歩、後ずさる。
「フィン、やめなさい」
クラウディアの静かな声に、フィンから放たれていた殺気が止まった。
場の緊張が一気にほどける。
ギルド内にいた他の冒険者たちは固唾を呑んでいたが、誰も口を挟もうとはしなかった。
「……やっべ、めっちゃこわかった……」とアレクがぼそり。
ようやく場の空気が落ち着いたそのとき、アレクはあっけらかんと言った。
「じゃ、クラウディアさん、フィンさん、飯でも食べながら次の依頼、相談しません? お腹すきましたし!」
「…あんたって…本当空気読まないのね…」セレナが肩をすくめてため息をつく。
「あはは……でも、ご飯食べながらは良いわね」とクラウディアが笑った。
「お気をつけて~!」と、ミシャが手を振って送り出す。
「初心者向けの依頼もいっぱいありますから、いつでも言ってくださいねー!」
四人は、にぎやかにギルドをあとにした。
向かったのは、クラウディアたちの拠点「木漏れ日亭」。
「ここのご飯、うまいんだよな~」
「……あんた、本っ当に毒の影響なくなったのね」
嬉しそうに話すアレクとセレナに、女将さんが顔をくしゃっと笑わせて叫ぶ。
「ありがとさん!あんたたち、これおまけしとくよ! さ、食った食った!」
次々とテーブルに並べられる湯気と香ばしい匂いに包まれて、
小さな食卓に、静かな笑い声が溶けていった。




