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追放令嬢は闇魔法で無双する。  作者: ちょこだいふく


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毒草とフィールドワーク

ギルドの一角、冒険者用の図書閲覧室。クラウディアは一冊の薬草図鑑を開き、静かにページをめくっていた。指先が止まったのは、濃い紫色の花を咲かせる植物ーー《スルーグの爪》。


「成分中の“ルグシン”は強い神経毒。だが希釈処理と加熱により、鎮痛作用を持つ外用薬として利用可能……」


「なるほど。毒は毒でも、使い方次第……ね」


傍らではフィンが控えており、無言のままクラウディアの勉学を見守っている。その視線はどこか嬉しそうでもあり、誇らしげでもあった。


「クラウディア様、先ほどの“影の糸”の精度であれば、薬草を傷めず摘み取るのも可能かと。毒草も同様です。訓練に適したエリア、手配しておきました」


「ありがとう、フィン。じゃあ行きましょう。……影と、毒の応用。試してみたいわ。」


日差しの差し込む午後、ふたりは街の北東にある薬草採取区画ーーカレナの丘へ向かった。



ーーーー


草木の匂いに包まれた丘陵地帯。クラウディアは周囲の影を巻き取りながら静かに足を進める。陽光の隙間に現れる濃い影の中に、彼女の魔力が漂っている。


「……これがアザレの葉、かしら。毒性はないけど、解毒作用があるのよね」


一枚ずつ、影の糸で繊細に摘み取っていく。魔力の操作は細かく、だが確かな手応えがあった。


その時ーー


「う、ぐ…痛……」

「これ、マズいって!」


林の奥から呻き声が聞こえた。クラウディアが駆け寄ると、二人の若い冒険者が地面に倒れ込んでいる。一人は膝から血を流しており、その傷口の周囲は不自然に赤黒く変色していた。


「その傷……毒草が付着したわね。これは…蛇咬草ね。傷口に触れると神経を麻痺させる」


クラウディアは即座に薬草袋を開き、アザレの葉を取り出した。影の糸で小さな炉を形成し、火を灯す。乾燥と加熱処理を施しながら、毒抜きした葉をすり潰してペースト状にする。


「少し痛むけれど、これを塗ればすぐに楽になるはずよ」


手際よく傷口に塗布すると、冒険者は息を吐いた。数分もすると苦悶の表情が和らぎ、体から緊張が抜けていく。


「……あなたがたはいったい…」


「……ただの冒険者よ」


そう言って立ち上がるクラウディアの背後に、影が揺れた。


そしてフィンが傍らでひとつ頷いた。


「このような応用を一日でこなすとは……さすがクラウディア様です。ご自身の素質と知識の融合、見事でした」


「そうかしら……でも、役に立ったのは良かったわね」


クラウディアはふと空を仰いだ。陽の光のもとで、影がひときわ深くなっているように感じた。




「……助かった……お、俺、マジで死ぬかと思った……」


吐き気と冷や汗の波が引いていくと同時に、青年の顔から生気が戻り始める。クラウディアが調合した薬を飲ませて数分、毒の症状は明らかに改善していた。


「本当に、ありがとうございます……。俺たち、ただの採集クエストだったんですけど……こんなことになるなんて」


青年が頭を下げる。もう一人の冒険者…少し年上の、無口そうな女性も小さく頷いた。

クラウディアは「当然のことをしたまでです」とだけ答える。


「俺、アレクって言います。こっちはセレナ。俺たちまだ駆け出しのDランクで、毒とかあんまりよく分かってなくて……」


「毒草と薬草が似ているのは初心者泣かせですからね」とクラウディアが言うと、セレナが少しだけ苦笑した。


「それにしても……あんなに手早く、迷いもなく薬を作れる人なんて、そうそういないよ。あなたたちいったい何者なんですか…?」


「私は、クラウディア。少し、薬草に詳しいだけです」


ほんの一瞬、アレクとセレナの表情が変わる。互いに目配せをし、納得したように息をついた。


「……ねえ、クラウディアさん。ひとつ、お願いがあるんだけど…」


彼女は静かに眉を上げる。


「しばらくの間、わたしたちとパーティ…組んでもらえないかな?」


クラウディアの目が細められる。


「どうして私たちと?」


「戦闘も、探索も、そこそこできるつもりだけど……薬草とか治療とか、そういうのがからっきしで…。でもさっきのクラウディアさん見てて思ったんだ。あの冷静さと判断力が俺たちには必要で…見て学びたいんだ…俺たち、強くなりたいんだ。ちゃんと、この世界でやっていけるように」


その目に嘘はなかった。少し熱すぎるほどの本気が滲んでいた。


クラウディアは一瞬だけ考え込む。パーティを組むことはリスクでもあり、チャンスでもある。


(……旅をするなら、一人より何人かいた方が効率はいい。信頼できるなら、の話だけれど)


「……条件があります」


「うん、なんでも言って!」


「私の命令には、必ず従ってもらうこと。そして無茶な戦い方をしないこと。あとは、……私に干渉しすぎないこと」


「了解っ!」

「……わかったわ」


頷いたクラウディアは、立ち上がって言った。


「では、まずはこの森を出ましょう。安全な場所に戻って、あなたたちの体調を確認してから。話はその後です。」


その後ろ姿に、アレクとセレナは敬意を込めたまなざしを向ける。


こうして、クラウディアの旅路に、二人の仲間が加わった。


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