報告と驚き
クラウディアはモンスターの核を革袋に詰め、ギルドのカウンターにそっと置いた。
「……え、これ……」
受付嬢の目がまんまるになる。
「討伐対象は《双頭の影狼》です。核も無事に回収しました。」
「双頭の……えっ、ひとりで!? クラウディアさん、おひとりでですか!? いや、念のため確認なんですが、その、パーティは……?」
「私と、フィンの二人だけです」
ギルド内が一瞬、静まり返る。次いで、数人の冒険者が「まさか」「信じられない」と呟いた。ミシャは震える手で帳簿に書き込みながら、上司を呼びに走っていった。
「これでまた異端扱いかしらね……」クラウディアは小さくため息をついた。
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夕刻、宿の自室に戻ったクラウディアは、ベッドの端に腰掛けて魔導具のスイッチを入れる。球体がふわりと浮かび、淡く蒼い光が部屋に灯る。
「クラウディア!?」「あっ、ディア!」
いつものように魔導具の向こうには、アーリントン家の家族が揃っていた。父・レオンハルト侯爵は堂々たる風格で肘掛け椅子に座り、母・セリーヌは紅茶を片手に微笑んでいる。その脇には、兄たち――冷静沈着な長兄・シリルと、快活な次兄・ルーファスも顔を覗かせていた。
「ディア見たぞ!ギルドの速報、あの影狼をお前が倒したって本当か!?」
ルーファスが先に口火を切った。目を輝かせて、前のめりになっている。
「本当よ。フィンと二人でやったの」
「おまえ……相変わらず桁違いだな……。初任務でこれか」
シリルは額に手を当て、半ば呆れたように笑っている。
レオンハルト侯爵がゆっくりと頷いた。
「フィンがこうも早く見つかるとは……クラウディア、お前はやはり大した娘だな」
「父様、なんで私がフィンを見つけたことをそこまで驚いていないの?」
クラウディアが眉をひそめると、部屋の隅の影がにわかに揺らめき、そこから黒い衣を纏ったフィンが音もなく姿を現した。
「侯爵閣下へは、任務開始時より逐一ご報告しております」
「…………!」
クラウディアが呆れたように口を開けたまま沈黙すると、セリーヌがくすりと笑った。
「ふふ……クラウディア、あなたが“報告など面倒”と言い出すのは分かっていたわ。だから侯爵様が直々にフィンへ連絡手段を与えていたの。用意周到でしょう?」
「だから…じゃないと思うけど……」
「まぁ、可愛い娘の旅、だからな」
レオンハルトは威厳ある笑みを浮かべ、シリルとルーファスもどこか誇らしげに妹を見つめていた。
「それはそうと!ディア!その影狼の戦いの詳細、ちゃんと聞かせてくれよ!どんな技使ったんだ? 影魔法って見えないから想像つかないんだよなー!」
「ルーファス、落ち着け。まずは報酬の確認だろう」
シリルが眼鏡を押し上げながら諭すが、ルーファスはまるで子供のように興奮している。
クラウディアはふっと笑った。家族の変わらぬ愛情と、まっすぐなまなざしが、何よりの癒しだった。
「じゃあ……ちゃんと話すから、最後まで聞いてね」
そして、クラウディアは影狼との戦いのすべてを語り始めたーーーー。




