幼少期
『幼少期の頃の話だ。私は、近所のお兄さんに性的な嫌がらせをされていた。半年か一年程度だろうか。触られたり、舐められたりしたが、私には何もわからなかった。
小学生の時、不登校を繰り返した。あてもなく彷徨った。当時、理由はわからなかったが、今ならわかる。ただただ見て欲しかったのだ。気づいて欲しかったのだ。
中学の時、私はどんどん浮いていった。周りが成長する中、私だけがガキだった。
高校の時、私は隠れた。何もかもから隠れた。見られるのが嫌だった。認識されるのが嫌だった。隠せばそれは私ではない。会話ベタの、非常識でちくはぐな、優秀な生徒だった。
ここに至って、私は気付いた。30を超えてやっと気づけた。あのときの、幼少期の出来事が元凶であると。
父の声に怯えた。壁を隔てようと、低く空気を震わせるその声に、注意を向けざるを得なかった。
母に伝えた。「援助するからしたいことがあったら言いなさい」と言われた。「一人暮らしがしたい」と言った。
その後、母はドル建ての保険に数百万円を使った。
父は数百万する車を買った。
今はまだ、ともに暮らしている。
兄が孫を連れてきた時、母は兄嫁に「邪魔者がいてごめんね」と笑った。』