7 ◇奪う気満々の行為
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「ごめん。好きだって告白されて舞い上がってしまった。
それで、このままじゃぁ駄目だ、別れないとって思ったんだけど……。
自分はもうすぐ結婚する身だし、だからこのままってわけにもいかないから
もうこれきりということでって、別れ話をしたんだ。
だけど、石田さんから、縋られてしまって。
『結婚してからも時々でいいから会ってほしい』って。
『結婚してくれなんて言わないし、奥さんからあなたを奪おうなんて
思ってない』って……」
酷い女性。
奪おうと思わないって、嘘ばっかりじゃない。
もうすでに結婚前から滉星のこと、狙い定めてこうして奪ってるじゃない。
滉星に裏切らせてるじゃない、私のこと。
自分から結婚前の男に告白すること自体奪う気満々の行為でしょ?
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「俺も自分が一番驚いてる。
浮気や不倫なんてそういうことは自分には関係のない世界のことだと
思ってきたから。
告白された時も『えっ、俺? なんで俺? しかも結婚表明しているのに』
って、不思議でしようがなかった」
「滉星くん、彼女からの告白が私と交際する前ならよかったのにね。
石田さんの異動がもっと早くにあれば、きっとあなたは私なんかに
告白してなかったんじゃないかしら……うんそう、なかったはずよ。
あなたはたぶん、すごく困ったのよね。
彼女のような高嶺の華によもや慕われることなどあるはずないと思っていたのが、
そのよもやが現実となり辛かったよね。
漬物石のような重しの私の存在が……。
ごめんね、とっても重たいヤツで。
でも大丈夫よ。
今からでも遅くないわ。
私が身を引けばまぁ~るく収まるじゃない。
好き合ってる人同士の気持ちを引き裂いたりする趣味は私にはないので安心して。
離婚してあげるから……その高嶺の華と結婚すればいいんじゃないっ?」