新たな任務
タカシたちは休日を終え、再び、調査本部に出向いた、そこでは、調査隊の太田隊長から新たなる指示がだされる事になった。タカシたちの次の任務とは、
静かな朝の光が調査隊本部の窓から差し込んでいた。休暇を終えたタカシ、昭彦、徹の三人は、緊張した面持ちで太田隊長のオフィスに立っていた。海での大発見を終え、次なる冒険への期待に胸を膨らませていた矢先のことだった。
「君たちに新しい任務を伝えたい」太田隊長の声は、
いつもより少し重みを帯びているように感じられた。
三人は息を呑んで待った。
「工場に戻って、生産業務を手伝ってほしい」
その言葉を聞いて、部屋の空気が一瞬凍りついた。タカシの胸の内では、失望と戸惑いが渦を巻いていた。ようやく調査隊として認められたと思った矢先の配置転換。その複雑な感情を抑えながら、彼は慎重に言葉を選んだ。
「隊長、僕たち...クビということなんですか?」
太田隊長は、その言葉に思わず笑みを浮かべた。「いや、違う。君たちは今回の調査で非常に高い評価を得ている。しかし今、街の復興にはもっと緊急を要する課題があるんだ」
昭彦が眉をひそめながら尋ねる。
「もしかして、他のプロジェクトへの転属ですか?」その声には、不安と共に冷静な分析を試みる理性が感じられた。
「ああ、その通りだ。これは君たちでなければできない重要な任務なんだ」
***工場での挑戦***
工場に戻った最初の一週間は、予想以上に厳しいものだった。タービンの部品製造を担当することになったタカシは、精密な加工が要求される作業に四苦八苦していた。一つのミスが発電所全体の性能に影響を与えかねない重責だ。
「このタービンブレードの角度が0.1度でもずれると、効率が大幅に落ちるんだ」
ベテランの技師が、真剣な表情で説明する。「発電所の心臓部とも言える部分だからな」
昭彦は制御システムの組み立てで、新しい課題に直面していた。
「従来のシステムでは不安定な出力に対応できない。まったく新しいアルゴリズムを組む必要がある」
彼は深夜まで図面とにらめっこを続けた。
徹は配電盤の製作で、予期せぬ問題に遭遇していた。
「部品の在庫が足りない。代替品で対応するしかないが、安全性の検証が必要だ」
彼は古い在庫を一つ一つ点検し、使えるものを選り分けていった。
しかし、三人の努力は次第に実を結び始めた。一ヶ月後、タカシのチームは予定の120%の生産性を達成。昭彦の設計した制御システムは、従来比で30%の効率改善を実現。徹は限られた資源の中で、新しい配電システムの構築に成功した。
***街の変化***
秋風が街を吹き抜けるようになり、木々の葉が色づき始めていた。発電所建設を急ぐ必要があった。凍える冬が来る前に、人々に暖かな光を届けなければならない。
ある休日、タカシたちは街を散策していた。
タカシ「だいぶ、涼しくなって来たな。秋本番といった所かな」と周囲を見渡した。
昭彦「ああ、だが、発電所の完成にはまだ時間が掛かりそうだ」と答える。
徹が「あいつ、この前、会った子供だ」繁華街で以前出会った少年、ツヨシと再会した。
「お兄さん!この前はありがとう。母ちゃんの病気も良くなったんだ」
少年の明るい笑顔に、タカシたちも心が温かくなった。
少年の名前はツヨシで今、小学校3年生と言う事が分かった。
遠くに建設中の発電所を指さしながら、タカシは説明した。
「あの発電所が完成したら、街はもっと明るくなるんだ。もう少しの辛抱さ」
「本当? また、前の街に戻るんだ?」
ツヨシの言葉に「ああ、そうだ。前の街に戻るんだ」と答え、
タカシは決意を新たにした。この子たちの世代に、かつての繁栄を取り戻さなければならないと。
***発電所の完成***
半年の歳月が流れ、ついに火力発電所が完成した。試運転の日、街中が期待に胸を膨らませていた。
夕暮れ時、巨大なタービンが低い唸りを上げながら回転を始めた。最初の数秒間、街は依然として暗闇の中にあった。人々は息を殺して待つ。
そして――
「あっ!」
誰かが指さす方向に、小さな明かりが灯った。次々と連鎖のように、街の灯りが点いていく。商店街のネオン、住宅の窓明かり、道路の街灯...。数分後には、街全体が温かな光に包まれていた。
「やったぞ、タカシ!」
昭彦が興奮した様子で叫ぶ。工場での苦労が、今この瞬間に報われた。
人々は街に繰り出し、久しぶりの明るい夜を祝った。商店街では急遽お祭りが開かれ、子供たちは明るい街路を駆け回っていた。工場では夜勤の作業員たちが、充分な明るさの中で効率的な作業を始められることを喜んでいた。
発電所の完成から数日後、街の雰囲気は大きく変わり始めていた。
夜になれば暗闇に沈んでいた通りは、今では温かな光で照らされ、露店が並び始めている。
「これで、夜でも安心して商売ができるな」
商店街の八百屋の主人が、ほっとしたように笑う。今までは日が落ちると営業を切り上げるしかなかったが、今では夜遅くまで客が訪れるようになった。
工場では、夜間作業が本格的に再開され、今まで止まっていた生産ラインがフル稼働していた。
「これで、もっと多くの資材を作れるな!」
作業員たちの声には活気があり、街全体に前向きな空気が漂っていた。
しかし、その一方で、新たな課題も生まれていた。発電所の稼働によって資源の消費が一気に増え、燃料の供給問題が浮上していたのだ。特に石炭や木材の需要が想定以上に急増し伐採地では人員不足や資材不足を懸念する声も出始めていた。
「電気が使えるようになったのはいいが、このままでは、採掘量が足りない。増産体制を整える事が急務だな……」資源管理官から、さらなる採掘要請が議会に提出された。
その頃、タカシは、街の明るい光を眺めながら、この発展の裏にある課題にも思いを巡らせていた。
***森からの警告***
発電所が稼働し、さらなる資源確保の為、森のより奥地まで木の伐採を行う事になった。
しかし、街の復興が進む中、不穏な噂が広がり始めていた。
ある日の夕方、ツヨシが青ざめた顔でタカシたちの元にやってきた。
「タカシお兄さん...父ちゃんと兄ちゃんが、森で何か見たんだ」
その時の様子をツヨシは震える声で語り始めた。
「昨夜、父ちゃんと兄ちゃんが森で木を切っていた時...最初は遠くで枝の折れる音がしたんだって。普通の動物だと思って気にしなかったんだけど...」
ツヨシは一度深く息を吸ってから続けた。
「その時、月明かりに大きな影が映ったんだ。父ちゃんの話じゃ、熊よりずっと大きくて…目が青く光っていたって。低い唸り声を上げながら、ゆっくりと近づいてきた…」
ツヨシは一度言葉を切り、少し迷うような表情を浮かべた。
「……それだけじゃないんだ。」
「まだ何かあるのか?」
「兄ちゃんが言ってたんだけど……その怪物、最初は四つん這いだったのに、途中で二本足で立ち上がったんだって。」
その言葉に、タカシたちは思わず顔を見合わせた。
「……二本足?」
「うん。まるで人間みたいに、ゆっくりと立ち上がって、しばらくこっちを見ていたんだって。」
「それで、どんな形をしていたんだ?」
「兄ちゃんは暗くてよく見えなかったけど、『動きが熊や狼とは違う』って言ってた。まるで…考えてるみたいに、じっとこっちを見つめていたって。」
タカシの背中に、冷たい汗が流れる。もしもそれがただの動物でないのなら……?
***新たな調査へ***
ツヨシの話を聞いたタカシはすぐに調査隊本部へ向かった。太田隊長も既に同様の報告を受けていた。
「実は、ここ一ヶ月の間に奇妙な出来事が相次いでいるんだ」
太田隊長は机の上に、複数の報告書を広げた。
太田隊長は机の上に、複数の報告書を広げた。
その紙には、通常の調査記録では見られないような、奇妙な記述が並んでいた。
「森の奥で見つかった巨大な足跡。長さは約50センチ……しかし、奇妙なのは、足の形がどの既知の動物とも一致しないことだ。」
「次に、説明のつかない方法で倒された木々。通常、風や動物の影響で倒れる木々は、根元から折れるか、地面に向かって倒れる。しかし、今回見つかった木々は、まるで強大な力で根本から引き抜かれたように、無造作に地面に転がっていた。」
「夜間に聞こえる不可解な鳴き声。目撃者によると、
それは『人間の呻き声に似ていた』という証言が複数ある。」
「最後に、動物たちが特定の地域を完全に避けている。猟師によると、以前は鹿や野ウサギが多く生息していたエリアが、突如として不自然な静寂に包まれているらしい。」
太田隊長は顔を上げ、タカシたちを見つめる。
「これは今までとは異なる、危険な任務になる可能性が高い。」
「これは今までとは異なる、危険な任務になる可能性が高い」太田隊長の表情は厳しかった。
今回の事件をきっかけに調査隊が新たに編成される事になった。タカシ、昭彦、徹たちも招集され、謎の怪物の正体を掴む為の特別調査隊が結成される事になった。
追跡の為に専門家も加わった。
未知の存在の正体を突き止め、それが街にとって脅威となるのか見極めなければならない。
出発の前夜、タカシは発電所の方角を見つめていた。ようやく街に希望の光を灯すことができた。その光を守るため、今度は森の闇に潜む謎を解き明かさなければならない。
明日、タカシたちは未知なる怪物の正体を突き止める為森へと出発の準備を行っていた。
その先には、人類の未来を左右するかもしれない発見が待っているのかもしれない。
タカシは静かに呟く「必ず、怪物の正体を突き止めてみせる」
ご購読、ありがとうございました。今回は新しい開発が進み街もある程度、持続可能な状況に整いつつある中、森で未知なる存在の報告を受ける事になりました。タカシたちは再び、調査隊として森の奥地へと向かう事になります。