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凶器の行方

作者: 東雲潮音

(ははは、やった、遂にやったぞ!俺はこいつを殺した!)


 灯りも殆どついていない暗い部屋で、男は歓喜していた。昔から殺す気でいた友人Aを遂に殺したのだ。殺害方法も完璧で思わず手が震える。


 この殺害方法なら、絶対に警察は犯人の男を見つけることができない。


(3年だ、3年もこいつを殺すための完璧な案を練り上げてきた)


 死体から男を特定するのは絶対に不可能な殺し方を長年考え、その上で実行した。死体には傷や、男の指紋などは一切なく、このまま死体が見つからなければ他殺であると警察には思われないだろう。


(まずは警察には自殺だと思わせなければな)


 男は暗く笑う、先入観は大事だ、一番最初に警察が自殺だと判断すれば、その後他殺である可能性を疑う可能性は著しく低くなる。それだけで完全犯罪が成り立つ可能性は高くなる。


(それに、これは密室殺人だ)


 死体がある状況も完璧だった。先日から友人Aが部屋の扉、窓の全てに鍵をかけている事は他の友人が知っている。その為、部屋の中に入る場合、必ず友人Aが中に招く必要があり、それは記録に残っている。記録に残っている人間は自然と容疑者になるが、死亡推定時刻には全員にアリバイがある。


 それに加えて、男は記録に残ることなく部屋に侵入し殺害を実行したのだった。しかも事前に犯行時刻にはアリバイがある事を証明できるようにしてある。完璧だ


 しかし、1つだけ問題があった、それは、


(くそっ!後はこの凶器さえ完全に隠せれば!)


 殺害方法、殺害状況、アリバイ、これらは全て完璧だ。それでもこの凶器を完全に消失させる方法が分からない。


(くそがっ!これさえ無ければ俺は完璧なんだ!それに時間がない)


 男は知っていた。もう暫くすると、この部屋に人が来ることを。誰かが来たらすぐに気付くだろう。こんな時間に、部屋の鍵が全て閉まっているのは明らかに不自然だ。


 そうなる前に何とかこの凶器を完璧に隠蔽しないといけない。そうでなければこれまで練ってきた案が全て台無しだ。男の計画は日の目を浴び、二度とこの案を実行することは不可能となってしまう。


 その時、階段を誰かが上がってくる音が聞こえる。おかしい、あり得ない。事前に聞いていた限りでは、まだ時間はあったはずだ。それでも音は聞き間違いでも何でもなく、徐々にこの部屋に迫ってきているのがわかる。


(馬鹿なっ!そんな偶然で、これまでの計画を台無しにされてたまるか!)


 男は更に焦り、凶器を隠す方法を懸命に探す。音は迫ってきている。このままでは危険だ。


 ガチャッ!!!ガチャッ!!!


 誰かがドアノブを捻る音だ。当然ながら鍵がかかっているので扉は開かない。だが最早、時間がないのは明らかだ。


(くそっ!こんなところで、諦めてたまるか!俺の計画は完璧なんだ!)


 あと一歩、あと一歩なのだ。あと一歩足が伸びさえすれば、完全犯罪は成される。


 だがそのあと一歩が出ない。ここまでなのかと男は考える。


 ドンッ!!!ドンッ!!!ドンッ!!!ドンッ!!!ドンッ!!!ドンッ!!!


 扉が強く何度も叩かれる。流石に鍵が閉まっていて不審に思ったのだろう。だがまだ大丈夫だ、まだ僅かにだが時間はある。それまでにこの凶器を━━、


 ガチャッ、


「なに!?……なんでだ!?」


 不意に扉が開けられた。鍵は予備も含めて、全てこちらの手元にあるはずだ一体なぜ。


「マスターキーですよ」


 中に入ってきた男がそう告げる。心なしか声に怒りを感じる。このような愚行をした自分に対して怒っているのだろうか。


「駄目だ!!!俺は、俺は、諦めない!!!」


「いや、もう無理でしょ。締め切り過ぎた後も散々待ちましたよ?早く原稿を渡してください」


「駄目だ!この完全犯罪をするためには凶器を完璧に消失させなければ」


「諦めてください、先生が言ったんですよ?完全犯罪のトリックを今日までに考えるって」


「ううぅぅ!!!!」


「完全犯罪が無理なら、やっぱり先生にはその穴を突く探偵小説を書いて欲しいんですが」


「嫌だ!俺は完全犯罪に探偵が敗北する小説を書きたいんだ!」


「その為のトリックを考えるのが無理なら諦めてくださいよ、先生」


「い、いやだぁぁぁぁ!!!!!!!」


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