表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の理想郷  作者: 霜月餅菜
神の理想郷
5/26

第肆話 兄との出会い

2025/02/04 編集済み

「う……」


「あ、見て! 動いたよ!」


 声がした方に振り向いたら、そこには小さな男の子がいた。


「かわいいなぁ……。手もぼく、じゃなくておれより小さい……」


 シャチを選択したと思うんだけど、この男の子は誰だろう……。

 手を見ると僕の手は、人間の赤ちゃんのようになってる。

 たけどこの男の子は、耳が少し魚類のような見た目をしている。


「坊ちゃま。弟様ができて嬉しいのはわかりますが、もう20年も毎日見続けられていて、いい加減弟様にも飽きられますよ」


「むぅ……。弟に呆れられてはこまる。でも、ぼくがのぞんでできた子だ!」


「えぇ。ですがそろそろ坊ちゃまの勉強も、本腰に入る頃と聞き及んでおります。弟様も自我が生まれる頃ですし、少し会う時間を減らしても良いのでは?」


「あぇ?」


 もしかして、この子は僕の兄?

 ……兄にはあまりいい思い出がないんだけど。


「――は! ごめんよライト。大きな声出しちゃって……あれ? 泣かない?」


「ふむ。自我が芽生えたようですね。王様と王妃様にご報告しましょう」


 えっと、まずは情報を整理しよう。ちょうどお話も終わったみたいだし。

 最初に見た小さな男の子、『坊ちゃま』という単語から貴族か何かだと思っていたけれど、まさか王族だとは。

 で、その子の弟なわけだから、僕も王族なわけで……。 

 よくある物語だと『王位継承権』だとか『派閥』だとか、とてつもなく面倒くさそうなことばかり。

 ここの国がどんな文化体系をしているかまだわからないけれど、平和に暮らしたいんだ。

 争いはしたくないし、できればあの子とも険悪な関係にはなりたくない。


 …………なんか、20年も毎日見続けたとか聞こえた気がしたけど、無視しよう。うん。


 だって、家族の中にストーカーがいるなんて思いたくない。

 ただの幼児の可愛さにやられているだけだ。うん。

 あの子も可愛かったけど。


 情報整理を一旦遮断し、聞き耳を立てる。

 メイド長みたいな人は、耳にしていたイヤリングみたいなもので連絡を取っているらしい。

 携帯電話みたいなものかな?


「シャイン様、王妃様が来られるそうです。服装を正しましょう」


「うむ。……ライトはそのまま?」


「えぇ。そろそろご飯のお時間ですので」


「あぅ」


 確かにお腹が減ってきたかも?



「よかったねぇ。ライト」


 王妃様と呼ばれていた人からミルクを飲み終わったあと、これからは離乳食だと言われて安心した。

 さすがにちょっと高校生が母乳を飲んでるように感じられて、拒絶しそうだったから。


 シャインというこの子が僕を褒めているのは、たぶんステップアップしたからだろう。

 ミルクから離乳食に。


「ねむい? ライト」


 世界が違うだけで、兄という存在はこんなにも違うのか。

 シャインは僕の名前を呼ぶたびに、嬉しそうな顔をする。

 

 そんな顔で呼ばれたら、拒否れないじゃないか。

 こんな大事にしてもらっているんだから。


「おやすみ……ライト」



「任務は終わったかい? シャイン」


「うん!」


 ぼく……じゃない。おれは弟のライトを見守るっていうにんむをおえたばかりなのだ。

 ほんとうはもっと見ていたかったけれど、とうさまに呼ばれたからね。


「ライトに自我が芽生えたことは嬉しいことだ。そこでだシャイン。君に重要な任務を与えよう」


 じゅうようなにんむ!

 とうさまがこの言葉をつかうときは、おれが王子としてうごくことをいみしているのだ。


「それはそう、ライトの身を守るために護衛術を学ぶことだ」


「ライト!」


「シャインは今、護身術を学んでいるだろう? 成績は上々だと聞いている。だからこそ自分を守る術から、人を守る術に移行するのも悪くはないだろう?」


 とうさまのお話はむずかしい。

 でもおれにわかりやすいように話してくれている。

 だからがんばってりかいするんだ!


「うん! おれ、ライトを守るよ!」


「よし、いい子だ。頑張るんだよ」


「はい! しつれいします!」



「よろしかったのですか?」


「なにがだい?」


「まだあの子には早かったのでは?」


「なぁに、本当に護衛術を教えるわけではない。まだ護身術も教え終わっていないのだから。……ただ、ライトを守るためといえば、学ぶ意欲が高まるだろう?」


「まぁ、あなたって人は……」


「身体は大丈夫かい?」


「えぇ。もうばっちり動けますよ!」


「では、赴こうか」


「はい! 『龍皇国』でしたね」


「あぁ。『五大王種族定例会議』は対面開催だからな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ