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ラブコメ短編集

【続編】難攻不落のクール美少女は陥落済みだったようです

作者: 越水けい
掲載日:2020/06/16

続編を望む声が一部から上がったので、少し書いてみました。

 

 私は教室で学級委員の仕事を進めていた。


「玲ちゃん、お仕事中?」


 私が仕事に没頭していると、目の前に一人の友人が現れた。


 彼女は同じクラスの乙川好実(おとかわこのみ)さんだ。


 いつも陽気なムードメーカーで、この学校随一の熱愛カップルの片割れでもある。


「そう。これを今週中に終わらせないといけなくてね」

「そうなんだ。私でよければ手伝うよ? というか、勝間くんはいないの?」

「勝間くんは、何だか調子悪そうだったから帰ってもらったの。それもちょっと心配だったんだけど……」


 彼とは最初の日以来、ほとんど話せていなかった。


 というのも、彼はここ数日、ずっと体調が悪そうだったのだ。


「ほうほう、玲ちゃんが男の子の心配をするなんてねぇ……」


 乙川さんは口元に手を当てて意味深にうなずく。


「いいでしょ。別に。まったく、乙川さんはすぐ恋愛に結び付けるんだから」

「ごめんごめん」


 彼女は全く悪びれていないように見える。


「私はただ、勝間くんに憧れてるだけ……」


 そう。憧れているだけなんだ。


「いつも優しい勝間くんみたいになりたいの。だから、彼と仲良くなりたくて、その……」


 私は言葉を探した。


「え、それ恋だよ?」


 乙川さんがまたにやけながら言った。


「すぐにそっちに持ってこうとするんだから!」


 まったく。彼女のせいで体温が上がってしまったじゃない。


「だって、男の子と仲良くなりたいのって、恋以外に何かあるの?」

「そっそれは……」


 他にもその、なにかあるじゃない……


「好実、いるか?」


 教室の入り口から一人の男子が顔をのぞかせる。


 彼は乙川さんの彼氏、魚見翔弥(うおみしょうや)くんだったっけ。


 彼とはクラスが違うからよく知らない。


「あ、翔弥! 今行く!」


 乙川さんが元気よく答え、彼に駆け寄る。


「うちの好実がなんか迷惑かけてたらすいません……」


 魚見くんが申し訳なさそうにこちらを見る。


 当の本人、乙川さんは彼の腕に捕まり、上機嫌でいる。


「いっいえ。お二人の仲がよさそうでなによりです」


 私は苦笑いでその場をしのいだ。


 彼女の言う通り、私は恋をしているみたいだ。


 多分、彼のことを知った去年の秋からずっと。





 金城さんに後を任せ、俺は爺ちゃんの家に来ていた。


 俺はあの日から何日か経った今もまだ、彼女に本当のことを言えていない。


「爺ちゃんはどうして俺にこんな力のことを教えたんだ? 爺ちゃん前言ってたよね。この能力は、自分に能力があると意識したときにはじめて使えるって」


 俺は内心の焦りからか、まくしたてるように爺ちゃんに詰め寄ってしまう。


「そうだな。だから、天が高校に入学したときに教えたんだ」


 爺ちゃんはそんな俺を見ても落ち着いたように言葉を返す。


「俺はもうこんな力いらないよ! 能力で他人の心を操るなんて……やっぱり駄目だよ」

「そうか。だが、なぜいきなりそんなことを言い出したんだ。前までは能力を使って散々楽しんでいたじゃないか」


 爺ちゃんは腕を組みながら俺に問う。


「ある人を能力で惚れさせてから、気づいたんだ。俺がやってることはその人への冒涜だって」

「それで、お前はどうしたいんだ?」

「もちろん彼女には能力のことを打ち明けて、効果もどうにかして解除するよ。他の人たちにも、説明する」


 それが俺にできる償いだから。


「そうか。なら、それでいいんじゃないのか? わざわざ私に相談することでもないだろう」


 爺ちゃんは俺が思っていたよりも冷たく俺に言い放つ。


「本当は……何が聞きたいんだ?」


 爺ちゃんの鋭い視線が俺に突き刺さる。


「彼女を傷つけるのが、俺が嫌われるのが、怖いんだ。能力のことなんて信じてくれないだろうし、多分頭がおかしい奴だって思われる。それでも俺は説明し続けないといけないし、真実を知ってもらわないといけないんだ……」


 自分が恥知らずなのは百も承知だ。


「踏ん切りがつかないのか」

「そうなんだ。俺は、こんなことになっても彼女に嫌われたくないって思っちゃうんだ。もう無理だってわかってるのに」


 俺の言葉を聞いて、爺ちゃんは一瞬考えこむ。


「お前は彼女のことが好きなのか?」

「いや、そんなことは……ない……と思う……」


 というか、俺に彼女を好きになる資格なんてない。


「だが、能力を使って女性の心を弄んだ自分が許せなくなったのだろう。それも初めて。それは、お前の中に彼女を大事にしたいと思う気持ちがあったからじゃないのか?」

「彼女を大事にしたい……」


 俺の中にそんな気持ちがあるのだろうか。


「だから彼女を傷つけた自分が許せないんじゃないのか」

「……確かに」

「だがな。だからと言って、嫌なことから逃げるのは良くない。自分で全てを打ち明けて彼女に謝罪すると決めたのなら、そうするのが道理だ」


 爺ちゃんは真っすぐ俺を見つめた。


「そうだよね。ありがとう、爺ちゃん」


 俺は立ち上がって、爺ちゃんの部屋を去った。


「私にもそんな時期があったな。だが、夢から覚めるのは、自分の力でないとな。それに、すべてを受け入れてくれる相手と結ばれるのが一番だろう」

 

 俺が部屋を出るとき、爺ちゃんが何かを言っていたような気がしたが、何を言っていたかまでは聞き取れなかった。





 更に数日後。


 俺と金城さんは放課後、教室に残って学級委員の仕事を続けていた。


「勝間くん、聞いてる? この仕事は今週中に終わらせないといけないんだから、一緒に頑張ろう?」

「……うん。そうだね」


 金城さんは優しく俺を励ましてくれる。

 でも、その優しさが俺には辛かった。


「どうしたの? やっぱり最近勝間くん、調子悪そうに見えるよ」


 彼女は真剣に俺のことを心配しているみたいだった。

 これ以上彼女を騙してはいられないな。


「あのさ。実は俺、金城さんに言わなきゃいけないことがあるんだ」


 俺は声を振り絞る。


「言わなきゃいけないこと? それって、もしかして大事な話?」

「うん。凄い大事な話だ」

「そっか……」


 金城さんも緊張しているみたいだった。


 その顔が俺の心をさらに締め付ける。


 でも、俺は言わなきゃいけないんだ。


「金城さんはさ、俺のこと、どんな風に思ってる?」

「え? なっ何、いきなり。最初から相手に聞くのはずるいよ……」


 彼女は少しの恥じらいを見せる。


 そんな顔が絶望に変わると思うと、本当に胸が苦しかった。


「……」


 俺は沈黙する。


「……もう。勝間くんは優しくて、面白くて、他の男の人たちと違って、私のことも一人の友達として見てくれる、凄いいい人だなって思ってるよ。あ、これは友達のままでいたいとか、そういう意味じゃなくてね……!」


 彼女は必死に言葉を繋げて、俺に伝えようとしてくれる。


「それ、全部金城さんの本当の気持ちじゃないんだ」

「え?」


 彼女は驚いたように声を上げる。


「信じられないかもしれないけど、俺は話した相手を惚れさせる能力を持ってるんだ。だから、金城さんが俺に良いイメージを抱いてるんだとしたら、それは俺の能力のせいで、金城さんの本心じゃないんだ」


 俺は一息に言い切った。


「何それ……」


 金城さんはうつむく。


 きっと俺は責められるだろう。


「本当に悪かった。人の心を弄ぶなんて最低だよな。謝って済むことじゃないのは分かってる。俺と会うのが嫌だったら、学級委員も辞退する。今まで騙してて本当に……」


 彼女はまだうつむいたままだった。


「違うよ」


 彼女が顔を上げた。


「へ?」


「私、ずっと勝間くんに憧れてたの。多趣味で色んなこと知ってるし……」


 それは能力を活用するためだ……


「友達もいっぱいいて、誰とでも笑顔で話せるし……」


 それも学級委員になるためだ……


「勉強とかも、凄い努力家だし……」


 それも金城さんと同じA組に入るためだ……


「これは私の本心だよ。勝間くん、さっき話した相手を惚れさせる能力って言ってたよね? でも、私は……勝間くんと初めて話す前から、知り合う前から、ずっと、ずっと……」


 彼女が俺の目を見つめる。



「好きだったよ」



 消え入りそうな声で発せられたその言葉は、小さな声だったはずなのに、俺の中で何度も反響して、俺の心臓の音を更にうるさくした。


「俺と、話す前から?」


 俺はまぬけな声で、かろうじて言葉を返す。


「うん。だから能力のせいじゃないよ」

「え、なんで……」


 俺は本気で困惑していた。


 金城さんに気に入られるような魅力が俺にあったか?


 俺なんて、能力以外に何もないだろ?


「多分なんだけど、勝間くんは能力なんて持ってないんじゃないかな?」

「いや、そんなことは……これまでも能力で散々モテて来たんだ」


 そんなことはあるはずがない。


 爺ちゃんは嘘はつかない。


「だって、勝間くんは能力なんかなくても十分かっこいいよ。他の人からモテるのも当然だよ」

「俺がかっこいい? 俺がモテる?」

「うん。誰かに取られたりしないか、ずっと心配だった」


 金城さんはおぼつかない言葉でぼそりと言った。


「そう、なのか……」


 俺はただ、能力を活かすために身だしなみを整えて、コミュ力を磨いて、趣味を増やしてただけだったんだが……


 いや、そうか。


 身だしなみが整っててコミュ力があって話してて楽しい男はモテるのか。


 能力なんてなかったんだな。


 金城と同じクラスになるために勉強して、学級委員になるために交友を広げてたのも……


 って、俺なにしてんだよ。こんなん、ただの金城さんへのアプローチじゃねえか!


 ああ、わかった。爺ちゃんの言ってた通り、俺は金城さんのことが好きなのか。


 そう思ったら急に楽になった。


「あの……まださっきの答え聞いてないんだけど……」


 金城さんが俺を目をのぞくように見つめる。


「やっぱり、駄目かな……?」


 そう言った彼女の唇は震えているように見えた。


 そんな彼女の顔は見たくは無い。


 だから。


「俺も好きだ。こんな俺でよければ付き合って欲しい」


 彼女は心から喜びがこぼれだしたように笑って、うなずいた。



 俺に本当に必要な能力は、自分を、彼女を信じる力だったみたいだ。


最後まで読んでいただきありがとうございます!



甘い! 爺ちゃんいい人! 末永く爆発しろ! と思ってくれた方はぜひ、下にある☆から応援してもらえると嬉しいです!


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