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第六話

再び屋内へと戻ってきたマキタは階段を駆け下りながら、16階を目指していた。このビルは21階建て。中規模のオフィスビルだ。


(16階の扉だけは、屋内戦を想定してメビウスがわざと開けてる筈だ……!)


屋上の扉のカギは閉めたが、メビウスはすぐに追ってくるだろう。彼女が体中に仕込んだリボルバーの中に、S&Wガバナーという銃がある。リボルバーのくせにショットガンの弾を撃てるキワモノだ。扉の蝶番くらいなら――――


『ドパァンッ!』


――――簡単に破壊できるだろう。マキタが16階に着き扉を開けた瞬間、屋上で爆音が響いた。しかし、マキタはここで()()()()を確信する。




「君か? 情けない叫び声を上げていたのは」




何故か、スモーキンドッグはいなかった。だがどちらにせよ、この場面のメビウスとスモーキンドッグの戦いは、()()が入って中断する展開なのだ。


マキタが扉を開けると、そこには薄暗いビルの内部に戦闘服に防弾ベスト、アサルトライフルを胸に提げた、哨戒中の3人の警官隊がいた。


「良かったァ~!! そうです僕です~!!」


治安警察予備隊。先の大戦で戦火を潜り抜けた叩き上げ、完全武装の精鋭が3人。別動隊のスナイパーもいる。


「それより気をつけて! そこの扉から"あの"メビウスが来ます!」


「………ほう」


その瞬間3人全員の表情が変わり、わずかに殺気をまとい始める。


「隊長、メビウスって……"魔弾のメビウス″ですか……!?」


「格好つけたアダ名で呼ぶな、ケイスケ。金の為に人を殺すチンピラだ」


「美人らしいぜ? どうせブチこむなら鉛玉よりも、なァ……?」


だが、隊長と呼ばれた男が手を上げると、全員が静まる。彼は無線で離れた場所にいる狙撃手(スナイパー)に指示を出す。


「久世だ。ヤマネコ、昼寝中すまんが"例のチンピラ"だ。ヒトロクニイマル交戦予定。例のビル、16階窓辺に誘導する。送れ」


【こちらヤマネコ、任務了解。尚、快適な職場環境を希望ゆえ、本任務完了後毛布の支給を求む。送れ】


「……ヤマネコは眠らないものだ。終わり」


久世一曹―――――生え揃った白髪を後ろに撫でつけた、この小隊を束ねる歴戦の猛者だ。耳には大きな貫通痕がある。


「君、良く教えてくれたね。名前は?」


「あ、えっと……マキタと申します」


「よしマキタ、ではすぐに非難しなさい。奥に抜ければもう一つ非常用の階段がある。我々はメビウスを君の元へは行かせない」


そう言って、一曹はニコリと笑ってみせる。マキタが書いた"強キャラ"の一人だ。


「おい、誰か一人ついて、彼の誘導を……」


「あ。ダメですよ! 全員で戦って、メビウスを退ける設定なんで!」


「え?」


「あっいや……とにかく街までの道くらい分かりますから!」


「では、迅速に非難を。………戦果は、今日のニュースで知るといい」


「あ……ありがとうございます!」


何て頼れるキャラなんだ! マキタは自分の考えたキャラクター、久世一曹の大きな背中を見て思った。久世はメビウスを退けた後も要所で主人公に力を貸してくれる、強力なサポートキャラなのだ。


「メビウスは体中に色んな種類のリボルバーを提げています! お気をつけて!」


そう言うと、マキタは非常階段へ走っていった。外に出ると、一面ゴミが広がっているが、酷い異臭も含めてマキタの想像通りではある。この先に行けば、設定上巨大なスラム街が有る筈だ。


(やった……!! これでメビウスは退却だ……そういう展開なんだからな!! 一泡吹かせてやったぞ!! 人を泣き虫扱いしやがって! 見たかバッキャロー!!)


マキタはグッと拳を突き上げてガッツポーズをすると、街を目指して歩き出した。




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