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第二十二話

その頃――――メビウスは落ち着いた様子で、コンクリ壁の向こうでリボルバーに弾を込めていた。


(ダサくて色気の無いあの銃はデザートイーグル……の.357マグナム弾、装弾数は9発。もう一人はコルトガバメント。装弾数は8発……いや、どうせ薬室に弾は無い……5.4.3.2...)


メビウスは耳を澄ます。


『――――ドパパパァン……!』


「はい弾切れ♡」


メビウスは再び飛び出すと、弾の再装填にもたつくケイとチヨコへ銃の標準を合わせる。慌ててマキタの後ろに隠れる二人。


「えぇっ!? ちょ、タイムタイム!」

「キャアーッ来るな来るな!!」

「うわっ!!やべぇ!! 撃つならこのゲロオヤジを!」


「悪いけど、銃を向けるなら容赦は―――」


だがその瞬間、メビウスは気付く。向けていた筈の右手の銃が()()()()()事に。


「!?」


視覚より僅かに遅れてメビウスを襲う鈍痛。銃を握っていた指がぐにゃりと曲がっている。

視界の端で捉えたのは、回転しながら宙を舞ってゆく彼女のリボルバー、M360J。


(弾かれた……いつ!?)


同時に目の前に現れるスバル。瞳を薄紅色に染め、メビウスを一瞥する。


「なっ……!?」


メビウスは素早くSAAを引き抜きスバルの眼前に構えて撃ち放つが、彼女は瞬間するりと状態をのけぞらせ、そのまま地面に寝転び――――


『タンッ』


――――刹那、今度は逆再生の様に驚異的なスピードで跳ね起き、スバルはメビウスの頬を思い切り殴り飛ばす。


『バキィッ!!』


「ぐっ……!」


だが、メビウスは殴られながらも目線だけはスバルから離さず―――


『タタタァンッ!』


速射で3発! 銃弾を放って彼女の追撃を阻止すると距離を取って再びリボルバーを向ける。


一瞬の膠着。ぐにゃりと曲がる、メビウスの視界。ガクガクと痙攣する、彼女の膝。


小娘の一発に、こうも効かれるとは!!


「成程……お前が()()()()()()()()か」


「………あぁ。そうだ」


「フフ……マキタでなくて良かったよ。少しは骨がありそうじゃないか」


「強がるな………お前の銃は私に当たらない」


「政府の犬め……独立解放戦線(ゴロワーズ)はお前の首に400万を賭けて私を差し向けた」


「だろうな。殺し屋まで雇う程恨みを買うヤツなど、連中しかいない」


「お前がレジスタンスをことごとく鎮圧するからだ。この国の人間が、何故政府(パーラメント)にしっぽを振る?政府など戦勝国共の傀儡だ。大義はこちらにある」


「………私はただ、今の暮らしを続けたい。大義などに興味はない。 ケイとチヨコと、ささやかに暮らすことが出来ればそれでいい」


「つまらない生き方だ。もっと夢や大義を持ちなよ、お嬢さん」


「あんたに夢はあるのか?」


「占領政府の打倒――――手始めに、その先鋒であるスモーキンドッグを殺すことさ……!」


「そうか」


スバルはメビウスを見つめ、ほんの一瞬刺し貫く程の鋭い殺気を放つ。


(小娘が――――一丁前の"殺気"じゃないか……!!)


スモッグでぼやけた太陽を背に立つその姿は、歴戦のメビウスにさえ僅かな畏怖の念を抱かせた。


「それなら……容赦はしない」


メビウスの頬を冷や汗が伝う。だが、それでもメビウスは不敵な笑みを浮かべてみせる。

彼女にはまだ、勝算があった――――


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