第二十一話
「………ガッカリだなぁ。キミには失望したよ。こんなにゾクゾクしたのは久しぶりだったのに」
「ゲホゲホッ……! くっ……スバルさん……その子達を連れて、早く逃げて……!」
しかし、スバルは動こうとしない。10mほど向こうで銃を構えるメビウスを睨みながら、小さな声で呟く。
「チヨコ、ケイ。頼む」
「「うわぁぁぁん!! 拳銃怖いよぉ~~!!」」
その瞬間、チヨコとケイが二人抱き合いながら、やや大げさに泣き声をあげる。少しバツの悪そうに、向けた銃の角度を落とすメビウス。
「………私の目標はそこの咳込んでる男だけ。お嬢さん達に用は無いから早く……」
だがその瞬間、ケイとチヨコは抱き合った状態から互いの腰に忍ばせていた銃を引き抜くと、メビウスへ撃ちまくる。
『ドタタタァンッ!!』
「「オラオラオララァアア!!」」
「!! チィッ!」
予想外の応戦に、一度扉の奥へと身を隠すメビウス。
「スバル! 悪いけど、ウチら当てる自信はないからね!」
「後は頼んだぜスバル!」
「分かってる。少しだけ時間を稼いでくれ」
そして、スバルは倒れたマキタの肩を抱き起こしてやる。
「意外とすぐ会えたな、マキタ。 彼女たちはケイとチヨコ。私の妹たちだ」
「ゲホッ……悠長な事言ってる場合ですか! あんな小さな子達じゃ、銃なんか持っててもすぐ返り討ちだ! 早く逃げ……」
「約束だ、これは返してもらうぞ? ……丁度必要でね」
スバルはいつの間にかタバコを咥えていた。彼女は傍に落ちていたジッポを拾うと―――
『パチンッ』
指のクラップでジッポのホイールを打ち、タバコに火を点ける。
「後な、マキタ………お前はスモーキンドッグじゃない」
「……!?」
その瞬間、マキタは気付いた。スバルが加えているのはタバコじゃない。
彼女の吐息と共に宙をたゆたう、桜色の煙。薄紅色の結晶体が、巻紙の先でキラリと光る。"チェリー"だった。
急激に増強されてゆく血流は負荷の掛かった毛細血管を破り、スバルの眼を紅く染めてゆく。
「私がスモーキンドッグ―――――この国を裏切った、戦勝国のイヌさ」
刹那、スバルは地面を弾きマキタの視界から消えた。
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ありがとうございます。
あまり更新は早くないのですが、、今後ともよろしくお願いします!




