第十七話
それから暫くして―――――
マキタはオフィスビルの16階、激戦を繰り広げたあの場所まで戻ってきていた。
『ジャリ・・・』
バキバキに割れた窓ガラス、粉砕したオフィステーブル、穴だらけの壁、転がる薬きょう。そもそもゴミ山に埋もれて崩れかけていたビル内は、さらに凄惨な光景になっていた。
「ふぅ……これでいい……後は、メビウスが来れば……」
マキタは何かの作業を終えたようで、額に滲む汗を拭いながらビル内を歩いてゆくが―――――
「あっ………!!」
マキタはあるものを見つけてその場にひざまずく。それはドス黒く変色した、血だまりの跡だった。見渡せば、それがいくつもある。
「やっぱり……皆やられてしまったんだ………久世隊長も……ケイスケ君も、皆……!」
激しい吐き気に襲われた昼間とは違い、今マキタは久世達が死んだことを痛切に実感し、静かに涙を流してた。そして夕焼けの光がガラスの割れた窓から差し込む中、マキタは両手を合わせて暫くの間手を合わせ―――――
『ドバァン!!』
―――――合わせる間もなく破裂音が鳴り響く。
(もう来たのか!?………メビウスのやつ……!!)
『ドバァンッ!!』
『ドバババァンッ!!!』
「来てあげたわよぉ!? スモーキンドッグ!!」
潜んでそうなものを片っ端からブチ抜き、メチャクチャな轟音を響かせながらメビウスは16階の入り口の扉をブチ破ると正面から躍り出た。
だが――――マキタの姿は無い。
「あんな情けないツラの君が、生ける伝説の"スモーキンドッグ"だなんてねぇ……! 呼び出してくれてどうもありがとう。私を殺すだけの準備はできたかなぁ?」
「…………」
「どこにいるのかなァ? 焦らされるのは、好きじゃないなぁ……」




