第十三話
マキタと別れたスバルは、3階にやってきた。売り物のテレビが陳列されている階だ。
「チヨコ、ケイ、待たせたな」
チヨコとケイ。道の端に座り込んで、ぼうっとテレビを見ていた二人の少女は振り向いてパッと顔を輝かせる。
「すばる、遅いよ~! ちょっと心配したんだから」
ケイは黒髪ショートのでボーイッシュな見た目。弥生顔と言うのだろうか。掘りの浅い整った顔立ちだが、胸だけは縄文というか、もはやアメリカンな感じだ。
「こっちはヒマでしょうがなかったぜ、ったく! どこほっつき歩いてたんだよ」
チヨコはケイより幼く、栗色の髪をローポジションでツインテール&三つ編みにしている。
顔は美少女なのだが、言葉遣いは悪ガキそのものである。レンズが縦に二つ付いたカメラを首から下げている。
「ちょっとチヨコ、もう少し女の子っぽい言い方を……」
「ケイはうるせーなぁ、そのメロンみたいなオッパイのしまい方でも考えとけよ」
「なっ……!!」
ケイは顔を赤くしながら、そのメロンみたいなオッパイを両腕で覆う。
「チヨコ、ケイにそんな口の利き方しちゃダメだ」
スバルが少し語気を強めると、渋々といった様子でチヨコは引き下がる。
「はいはい、分かったよ……さっさと"宝探し"に行こうぜ?」
「宝探しって……ゴミ山、漁りに行くだけじゃん」
「うるせーなぁ、ツイてなかった分、今日は見つかる気がするんだよ。コイツの修理に必要な部品!」
そう言って、チヨコは首から下げたカメラを掲げてみせる。二貫カメラと呼ばれる。かなり珍しいタイプだ。
「まぁ確かに私たち、今日はツイてないかもね……」
「どうたんだ?」
「パンイチのやべーオッサンに、横でゲロ吐かれた」
「え、チヨコ達も会ったのか?」
「え? パンイチのオッサン?」
「多分彼だ。マキタというヤツでな。ザリガニラーメンを奢ってやった」
「ハァ!? 何でそんなヤツに!?」
「いや……だって困ってそうだったし……あと、ジッポも貸した」
「えぇ~!? スバルって、ほんっとお人好し!」
「『貸してくれ』ってのは『ぜってー返さねぇ』だぞォ? 見返りねぇヤツに施してどーすんだよ。」
「わ……分かっている。私の勝手だろっ」
そう言って、スバルは腕を組みそっぽを向いてみせる。
「それに……」
「それに?」
「何か……良い人そうだな……って、思ったんだ」
「良い人ねぇ………まぁ知らないけどさ、スバルは間違いなく"お人よし"だよ」
「でもさ、なんか変な人だったよね。私とチヨコでニュース見てたんだよ。そしたら、横で急にうずくまって……」
"ニュースを見ていた"――――ケイの台詞に、少し引っかかりを覚えるスバル。
「……ニュースの内容は?」
「治安警察、小隊全滅」
「……!」
「どうしたの?」
「マキタは……"スモーキンドッグ"を探していたんだ」
「ふうん。どこにいるのかだーれも知らない、最強無敵のスモーキンドッグ様が、目ん玉節穴ヤローに見つかるかってんだ」
「チヨコ、そんなに言わなくたって……」
「なぁスバル、早く"宝さがし"に行こうぜ?」
「………」
「なぁ、スバルってば、宝探し!」
「あ……あぁ、そうだな」
「ゴミ漁りねー」




